GoogleがAI決済プロトコル「AP2」発表!AIエージェントが買い物する時代の幕開け
2025年9月17日、GoogleがAIエージェントによる安全なオンライン決済を実現するための、新しい標準プロトコル「Agent Payments Protocol」(通称:AP2)を発表したことが報じられました。
この発表は、AIエージェントに初めて安全な「財布」を持たせるものであり、AIが単なる情報アシスタントから、自律的に経済活動を行う主体へと進化する、歴史的な転換点となるかもしれません。
Googleが提唱する、AIのための「財布」:「AP2」とは
Googleが新たに発表した「AP2」は、AIエージェントがユーザーに代わって、商品購入やサービス契約といった経済活動を、安全かつ自律的に行うための新しい決済プロトコル(通信ルール)です。これまで、AIエージェントは情報の検索や要約はできても、最終的な「購入」ボタンを押すことはできませんでした。「AP2」は、その最後の壁を取り払うための、信頼性の高い基盤技術となることを目指しています。
安全性の鍵を握るデジタル契約「マンデート」
AIに決済を任せる上で、最大の懸念は「暴走」や「不正利用」のリスクです。「AP2」は、この課題を「マンデート」と呼ばれる、改ざん不可能なデジタル契約によって解決します。
AIの権限を厳密に管理
「マンデート」とは、ユーザーがAIエージェントに与える権限を、事前に詳細かつ明確に設定する、いわば「委任状」のようなものです。ユーザーは、以下のような項目を具体的に設定できます。
- 予算: 「1万円まで」
- 期間: 「今日の24時まで有効」
- 購入条件: 「A社の公式サイトからのみ」「中古品は除く」
- 購入対象: 「特定の商品リストに含まれるもののみ」
この「マンデート」があることで、AIエージェントは与えられた権限の範囲内でしか行動できなくなり、ユーザーは安心して決済を任せることができます。
条件付きの高度な自律購買が実現
この仕組みにより、これまで人間には難しかった、高度な購買活動も可能になります。例えば、「A商品の在庫が復活したら、価格が15,000円以下の場合に限り、自動で購入して」といった、条件付きの指示をAIエージェントに出しておくことができます。AIは市場を常に監視し、条件が満たされた瞬間に、マンデートの範囲内で自律的に購入を実行します。
PayPal、Shopifyも支持、「エージェント経済」の誕生へ
Googleが提唱するこの「AP2」構想は、単なる一企業の取り組みに留まりません。発表時点で、既に業界の主要プレイヤーがこぞって支持を表明しており、新しい経済圏の誕生を予感させます。
60社以上が参加する広範なエコシステム
この構想には、PayPal、Shopify、Stripeといった決済・Eコマース業界の巨人たちをはじめ、60社以上の企業が既に支持を表明しています。これは、「AP2」が一部のサービスでしか使えない特殊な技術ではなく、業界標準の決済プロトコルとなる可能性が非常に高いことを示しています。
「エージェント経済」の到来と企業の備え
AIエージェントが自律的に経済活動を行うようになると、企業と消費者の関係は大きく変わります。BtoCだけでなく、BtoBの領域でも、企業の購買担当AIエージェントが、最適なサプライヤーを自律的に探して発注するといった未来が訪れるかもしれません。
このような、AIエージェントが経済活動の主要なプレイヤーとなる社会は「エージェント経済」と呼ばれます。企業は今後、人間だけでなく、「AIエージェントを新たな顧客接点」として捉え、AIに分かりやすく、信頼されるような情報提供や販売戦略を構築することが不可欠となります。
まとめ
Googleが発表した新しい決済プロトコル「AP2」は、AIエージェントが情報処理ツールから、経済活動の主体へと進化するための、極めて重要な基盤技術です。「マンデート」による高い安全性を確保し、業界の主要プレイヤーを巻き込んだオープンなエコシステムを構築することで、AIエージェントが買い物をするという未来を、一気に現実のものとしました。
この「エージェント経済」の到来は、すべての企業にとって、自社のマーケティング、販売、そして顧客とのコミュニケーションのあり方を、根本から見直すきっかけとなるでしょう。あなたの会社の製品やサービスは、AIエージェントに「選ばれる」準備ができているでしょうか。
出典:ITmedia
