話題のローカルAI「Moltbot(旧Clawdbot)」|なぜ突如改名したのか?

2026年1月、AI界隈で一つのオープンソースプロジェクトが爆発的な話題となりました。
その名は「Clawdbot(クロードボット)」。

従来のクラウド型AIチャットとは一線を画し、ユーザーのPC上で直接動作して、ブラウザ操作、ファイル管理、コード実行といった実務を自律的にこなす「動けるAI」として熱狂的な支持を集めました。

しかし、その熱狂の最中、突如としてプロジェクト名の変更が発表されます。
新名称は「Moltbot(モルトボット)」。「脱皮」を意味するこの名前に込められた意図とは?

本記事では、リブランドの経緯から、Moltbotの革新的な機能、そして利用者が知っておくべきセキュリティリスクまで、話題のローカルAIエージェントの全貌を徹底解説します。

1. Moltbot(旧Clawdbot)とは?:「動けるAI」の正体

Moltbotは、2026年に登場したオープンソースのセルフホスト型AIアシスタントです。開発者はPeter Steinberger氏。

そのコンセプトは、単なるテキスト対話AIではなく、24時間稼働し、記憶を持ち、ユーザーの代わりにコンピュータ上の実操作を遂行する「パーソナルなデジタル同僚」です。

なぜこれほど話題になったのか?

従来のChatGPTやClaudeのようなサービスは、クラウド上のサーバーで動作し、ブラウザの画面内で完結する作業が中心でした。

一方、MoltbotはあなたのMac MiniやLinuxサーバーといったローカル環境で直接動作します。これにより、PC内のファイルにアクセスしたり、ターミナルコマンドを実行したりといった、これまで人間にしかできなかった領域のタスクをAIに任せることが可能になりました。

さらに、WhatsAppやTelegramといった普段使いのメッセージアプリから手軽に指示を出せる利便性も相まって、熱狂的なブームを引き起こしたのです。

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2. 突如の改名劇:ClawdbotからMoltbotへ

プロジェクト開始当初は「Clawdbot」という名称で知られていましたが、2026年1月27日、正式に「Moltbot」への改名が発表されました。

改名の理由:商標問題

最大の理由は、AIモデル「Claude(クロード)」を提供するAnthropic社からの法的要請でした。「Clawd/Clawdbot」という名称、特にマスコットキャラクターの「Clawd」が、Anthropic社の商標と混同される懸念があるとの指摘を受けたためです。

開発者のSteinberger氏はこれを受け入れ、「Molt(脱皮)」という新しい名前を選びました。ロブスターが成長のために古い殻を脱ぎ捨てるように、法的な制限という殻を脱ぎ捨ててさらに成長するという強い意志が込められています。マスコット名も「Molty」に変更されました。

改名に伴う混乱と詐欺の発生

このリブランドは急遽行われたため、一時的なカオスも生じました。旧プロジェクト名が手放された直後、GitHubやXの旧ハンドルが第三者に取得され、それに乗じた偽の仮想通貨(ミームコイン、$CLAWDなど)詐欺が横行する事態となりました。開発者が注意喚起を行うなど、対応に追われることとなりました。

騒動を乗り越えて

一時の混乱はあったものの、この騒動がかえってプロジェクトの注目度を高める結果となりました。X(旧Twitter)上では、新マスコット「Molty」への愛着や、Anthropic社の対応への議論なども巻き起こり、バズは依然として続いています。

3. Moltbotの主要機能:サービス内容は変わらず強力

名称は変わりましたが、提供される機能やサービス内容はClawdbot時代と全く同じです。

① マルチチャネル連携:いつものアプリがAIの窓口に

WhatsApp、Telegram、Slack、Discord、iMessage、Signalなど、10種類以上の主要なメッセンジャーアプリと連携可能。外出先からスマホで「家のPCにあるあのファイルを送って」「航空券を調べておいて」と指示を出すことができます。

② 強力な自律アクション(Skills)

Moltbotは「行動するAI」です。

  • ブラウザ制御: Chromeなどを操作し、Webサイトの閲覧、情報収集、フォーム入力などを代行します。

  • システム操作: ファイルの読み書き、移動、ターミナルコマンドの実行、メール送信、カレンダー予約など、PC上での様々な操作を実行します。

③ 持続的な記憶(第二の脳)

会話の内容、共有したファイル、ユーザーの好みなどをローカルデータベース(Postgresなど)に長期記憶します。Obsidianなどのノートアプリと連携させ、過去の文脈を踏まえた賢いアシスタントとして機能します。

4. 導入とセキュリティリスク(超重要)

Moltbotは非常に強力なツールですが、その性質上、導入と運用には高いリテラシーと注意が必要です。

導入環境:Mac Miniが人気

多くのユーザーは、常時稼働させるための専用機としてMac Mini (M4など)を購入したり、Linux VPS(仮想専用サーバー)を利用したりしています。インストールはNode.js環境があれば npx moltbot onboard コマンドで簡単に始められます。

「スパイシーなリスク」:諸刃の剣

Moltbotの最大の特徴である「PCへの深いアクセス権限」は、最大の弱点でもあります。開発者自身が「スパイシーなリスク(Spicy Risk)」と表現するように、以下の点に十分な注意が必要です。

  • プロンプトインジェクション: 悪意のある命令によって、PC内の機密情報(秘密鍵など)を盗まれたり、システムを破壊されたりする危険性があります。

  • 公開サーバーのリスク: インターネットに不用意に公開されたサーバーが、認証なしで外部から操作可能な状態で放置されている事例が数百件報告されています。

運用にあたっては、Dockerコンテナや仮想マシン(VM)など、隔離されたサンドボックス環境での利用が強く推奨されます。

まとめ

「Clawdbot」から「Moltbot」へと脱皮したこのプロジェクトは、ローカルAIエージェントという新たな潮流の象徴的存在となりました。

プライバシーを重視し、自分の環境で強力なAIを飼いならしたい上級ユーザーにとって、Moltbotはこれ以上ない魅力的な選択肢です。商標問題という荒波を乗り越え、さらに進化を続ける「Molty」の今後に注目が集まります。

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