【ローカル生成AI】目的別おすすめツールと始め方を解説

クラウドサービスの利用が一般的な生成AIですが、セキュリティやコスト管理の観点から、自社のPCやサーバー(ローカル環境)でAIを動作させる選択肢が、今ビジネスの世界で大きな注目を集めています。
しかし、「具体的にどのツールを使えば良いのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。
本記事では、これからローカル環境で生成AIを始めたいビジネスパーソンに向けて、目的別におすすめのツールやモデル、そして導入に必要な知識までを分かりやすく解説します。
目次
なぜ今「ローカル」の生成AIがおすすめなのか?
手軽に始められるクラウドサービスが多数存在する中で、あえてローカル環境を選ぶことには、ビジネス利用において明確なメリットがあります。ここでは、ローカルでの生成AI活用がおすすめされる3つの主要な理由を解説します。
1. 圧倒的な情報セキュリティ
ローカル環境で生成AIを動作させる最大のメリットは、セキュリティの高さです。開発中の製品情報や顧客データといった社外秘の情報を扱う場合でも、全ての処理が自社のネットワーク内で完結します。情報漏洩リスクを根本から排除できるため、企業のコンプライアンスと信頼を守りながら、安全にAIを活用できます。
2. 長期的なコストパフォーマンス
クラウド型のAIサービスは、利用量に応じた従量課金制が一般的で、頻繁に利用するとコストが高額になる可能性があります。一方、ローカル環境は、高性能なPCへの初期投資は必要ですが、一度環境を構築すれば、追加の利用料なしで何度でもAIを利用可能です。長期的に見れば、トータルコストを大幅に抑えられる点がおすすめです。
3. 高度なカスタマイズ性
ローカル環境では、世界中の開発者が公開しているオープンソースのAIモデルを自由に利用し、自社の目的に合わせて調整できます。社内文書を追加学習させ、独自の業務に特化した専用AIを構築するといった、クラウドサービスにはない高度なカスタマイズが可能です。
関連記事:【生成AIをローカル環境で】メリット・デメリットと始め方を解説
【テキスト生成AI】ローカル実行におすすめのLLM
社内文書の要約や分析、機密情報を扱うチャットボット開発など、ビジネスにおけるテキスト生成AIの活用範囲は無限大です。ここでは、ローカル環境でテキスト生成を行う際におすすめのモデルと実行環境を紹介します。
おすすめモデル:Meta「Llama」シリーズ
Meta社が開発した「Llama」シリーズは、オープンソースでありながら非常に高性能な大規模言語モデル(LLM)として、世界中の開発者から支持されています。特に最新版は、多くのタスクでクローズドな商用モデルに匹敵する性能を示しており、ローカル環境で汎用的なテキスト生成AIを構築する際の最もおすすめな選択肢の一つです。
おすすめ実行環境:「Oobabooga Text Generation WebUI」
ダウンロードしたLLMを、チャット形式で手軽に利用するための実行環境(UI)です。比較的簡単なセットアップで、Llamaをはじめとする様々なオープンソースLLMを切り替えて試すことができます。ローカルで対話型のテキスト生成AIを始める際の、事実上の標準ツールとしておすすめです。
【画像生成AI】ローカル実行におすすめのツール
広告素材のデザイン案作成や、機密性の高い製品のコンセプトアート制作など、画像生成AIのローカル実行は、クリエイティブ業務の効率化と情報保護を両立させます。
おすすめモデル:「Stable Diffusion」
Stability AI社が主導で開発した「Stable Diffusion」は、ローカルで画像生成を行う上でのデファクトスタンダードと言えるオープンソースモデルです。非常に巨大なユーザーコミュニティが存在し、画風を追加学習させた派生モデルや、特定のポーズを制御する拡張機能などが豊富に公開されているのが最大の魅力です。
おすすめ実行環境:「Stable Diffusion Web UI (Forge)」
Stable Diffusionを快適に利用するための、最もポピュラーな実行環境の一つです。豊富な機能を備え、パラメータを細かく調整することで、プロフェッショナルレベルの画像作成が可能です。本格的な画像生成に挑戦したい方に、まずおすすめしたい実行環境です。
【動画生成AI】ローカル実行におすすめのツール
近年、技術的なハードルが最も高かった動画生成の分野でも、ローカルで手軽に利用できるツールが登場しています。SNS向けのショート動画制作などに特におすすめです。
おすすめツール:「FramePack」
2025年4月に公開されたオープンソースの動画生成AIで、ローカル実行のハードルを大きく下げたと注目されています。1枚の画像と動きを指示するテキストだけで、比較的スペックの低いPCでも安定した長尺動画を生成できるのが最大の特徴です。難しい設定が不要で、手軽に始められるため、ローカルでの動画生成に初めて挑戦する方に特におすすめです。
関連記事:【ローカル動画生成AI】FramePackで始める安全な動画作成
ローカル生成AIおすすめツール比較と選び方
ここまで紹介したおすすめのツールを一覧で比較します。自社の目的とスキルレベルに合ったツールを選ぶ際の参考にしてください。
カテゴリ | おすすめツール/モデル | 主な用途 | 特徴 | こんな人におすすめ |
テキスト生成 | Llama + Oobabooga | 社内文書分析、チャットボット開発 | 高性能なオープンソースLLMと、それを動かす標準的なUIの組み合わせ。 | 機密情報を扱いながら、文章作成や要約業務を効率化したい方。 |
画像生成 | Stable Diffusion + Web UI (Forge) | 広告素材作成、デザイン案出し | 豊富な派生モデルと拡張機能が魅力の、画像生成の王道構成。 | クリエイティブな業務で、自由度の高い画像作成を行いたい方。 |
動画生成 | FramePack | SNS用ショート動画、製品デモ動画 | 1枚の画像から手軽に動画を作成可能。比較的低スペックPCでも動作。 | 動画作成の専門知識はないが、ローカルで手軽に試してみたい方。 |
ローカル実行の注意点と必要なPCスペック
ローカル環境での生成AI活用には、準備も必要です。特に、ハードウェアへの初期投資と、ある程度のIT知識が求められる点は理解しておきましょう。
高性能なGPUへの初期投資
生成AIの計算処理は、そのほとんどをGPU(グラフィックボード)が担います。快適な利用のためには、NVIDIA社のGeForce RTXシリーズなど、VRAM(ビデオメモリ)を多く搭載した高性能なGPUへの投資が不可欠です。
パーツ | 入門レベル | 本格利用レベル |
GPU (VRAM) | RTX 3060 / 4060 (12GB) | RTX 4070 SUPER / 4080 SUPER (16GB以上) |
メモリ (RAM) | 32GB | 64GB以上 |
ストレージ | 1TB以上の高速SSD (NVMe) | 2TB以上の高速SSD (NVMe) |
セットアップと管理の手間
クラウドサービスとは異なり、ローカル環境ではソフトウェアのインストールやアップデート、トラブルシューティングなどを全て自己責任で行う必要があります。基本的なコマンドライン操作など、ある程度のITリテラシーが求められることを念頭に置いておきましょう。
まとめ
本記事では、生成AIをローカル環境で利用するためのおすすめツールを、目的別に解説しました。クラウドの手軽さも魅力的ですが、情報セキュリティ、コスト管理、カスタマイズ性を重視する企業にとって、ローカル環境はそれを実現する強力なソリューションです。
テキストなら「Llama」、画像なら「Stable Diffusion」、動画入門なら「FramePack」が、2025年9月時点での有力な選択肢です。この記事を参考に、自社のニーズとリソースを評価し、ローカルでの生成AI活用という次の一歩を検討してみてはいかがでしょうか。
