機密データも安心。LangChain「LangSmith」セルフホスト版で実現するセキュアなAI開発

2026年1月16日、AIエージェント開発フレームワークのデファクトスタンダードであるLangChain社は、開発プラットフォーム「LangSmith」のセルフホスト版(v0.13)をリリースしました。

このアップデートは、金融機関や医療機関、公共機関など、「便利でもクラウドにデータを出すわけにはいかない」という厳しい制約を持つ企業にとって、待望のニュースです。自社のセキュアな環境内で、最新のSaaS版と同等の機能を使ってAIエージェントを開発・運用できる時代の幕開けを解説します。

外部にデータを出さない。「完全閉域」での開発が可能に

これまで、高度なAIエージェントを開発しようとすると、ログデータやトレースデータをクラウド上の管理コンソールに送信する必要があるケースが多く、セキュリティポリシーの厳しい企業では導入の障壁となっていました。

データ主権を自社の手に

今回リリースされたv0.13の最大の特徴は、データ主権の完全な確保です。

Kubernetes環境などを利用して自社インフラ(オンプレミスまたはVPC)内にプラットフォームを構築するため、顧客の個人情報や社外秘の機密データが一瞬たりとも外部に出ることはありません。

金融・医療レベルのセキュリティ

さらに、データベース接続におけるmTLS(相互TLS)のサポート強化や、IAM(Identity and Access Management)認証の統合により、金融や医療業界が求める厳格なエンタープライズ基準のセキュリティ要件を満たせるようになりました。

クラウド版と同等の機能をオンプレミスで

通常、ソフトウェアのセルフホスト版はクラウド版(SaaS)に比べて機能提供が遅れがちですが、今回のアップデートでその差は解消されました。

ノーコード開発機能「Agent Builder」に対応

特に注目すべきは、GUIベースで直感的にエージェントを作成できる「Agent Builder」がセルフホスト環境で利用可能になった点です。

これにより、プログラミングが得意ではない担当者でも、ブラウザ上でフローを組み立て、プロンプトを調整し、エージェントを構築できるようになります。「セキュアな環境だから開発ツールが不便」という言い訳はもう通用しません。

トレースデータから洞察を得る

また、AIエージェントの挙動ログ(トレースデータ)を自動分析する「Insights」機能も搭載されました。「なぜAIがその回答をしたのか」というブラックボックス化しやすい問題を、自社サーバー内で安全に解析・可視化できます。

エンタープライズ基準の管理とスケーラビリティ

大規模組織での運用を見据えた、ガバナンス機能とインフラ性能の向上も図られています。

コストと利用状況の可視化

「誰が」「どのプロジェクトで」「どれくらいトークンを消費したか」を詳細に追跡するレポート機能が強化されました。これにより、部署ごとのコスト配賦や、予算オーバーの防止といったAIガバナンスを効かせることが可能です。

高負荷に耐えるインフラ構成

技術面では、Redisクラスターの正式サポートや、KEDA(Kubernetes Event-driven Autoscaling)ベースのオートスケーリング機能が導入されました。これにより、数千人の従業員が同時に利用するような高負荷な本番環境でも、安定したスループットを維持できるようになっています。

まとめ

LangChainによる今回のリリースは、日本企業、特に規制産業におけるAI活用を劇的に加速させる可能性があります。

「クラウドに出せないデータ」を抱えながらAI活用に二の足を踏んでいた企業も、自社専用の「プライベートAIエージェント」を安全に、かつ最新のツールセットを使って構築できる環境が整いました。

出典: LangChain