Salesforceが「Agentforce 3」を発表!AIエージェント導入の壁を打ち破る新機能とは
株式会社セールスフォース・ジャパンは2025年6月27日、企業がAIエージェントを大規模に導入・拡張する上での最大の障壁である「可視性」と「制御性」を解決する新製品「Agentforce 3」を発表しました。
AIの活動を監視・制御する管理画面や、他社製LLMも利用可能なオープンな基盤を提供することで、AIエージェントが企業の基幹業務を担う上で不可欠な信頼性とガバナンスを確立する、重要な一歩となります。
Salesforceが挑む、エンタープライズAIエージェント導入の「壁」
AIエージェントがもたらす生産性向上の可能性に、多くの企業が期待を寄せています。しかし、その導入を全社的にスケールさせようとすると、必ず二つの大きな「壁」に直面します。CRMの巨人であるSalesforceは、このエンタープライズ利用における本質的な課題に正面から向き合いました。
エンタープライズAIの「ブラックボックス問題」
一つ目の壁は「可視性」の欠如です。AIエージェントが自律的にタスクを実行する際、「AIが今、何をしているのか」「どのような判断基準で動いているのか」が人間から見えない、いわゆるブラックボックス状態に陥りがちです。これでは、何か問題が発生した際に原因を特定することができず、安心して重要な業務を任せることができません。
二つ目の壁は「制御性」の欠如です。AIエージェントの行動範囲やアクセスできる情報、実行できるタスクを厳密に管理・制限できなければ、意図しない操作による情報漏洩やシステム障害といった、重大なセキュリティインシデントに繋がるリスクがあります。
Salesforceの回答:「Agentforce 3」
Salesforceが新たに発表した「Agentforce 3」は、まさにこの「可視性」と「制御性」という二大課題を解決するために設計された、次世代のAIエージェントプラットフォームです。企業が最高水準の信頼性、セキュリティ、コンプライアンスを確保しながら、AIエージェントの恩恵を最大限に享受できる環境を提供することを目指しています。
「Agentforce 3」の核心機能:信頼とガバナンスを実現する3つの柱
「Agentforce 3」は、企業のAIエージェント活用を具体的かつ安全に推進するため、大きく分けて3つの強力な新機能を備えています。
1. Agentforce Command Center:AIの活動を監視・制御する管理画面
「可視性」と「制御性」の課題を直接的に解決するのが、この「Agentforce Command Center」です。これは、社内で稼働するすべてのAIエージェントの活動状況を、人間が一元的に監視、測定、そして管理するためのダッシュボードです。どのエージェントが、いつ、どのようなタスクを実行し、どれほどの成果を上げているのかをリアルタイムで把握できます。パフォーマンスに問題があるエージェントを特定したり、行動を修正したりといった制御も可能となり、AIのブラックボックス化を防ぎます。
2. MCPサポート:AIエコシステムを構築する連携基盤
「Agentforce 3」は、AIエージェント間の連携を可能にする共通基盤「MCP(Model Context Protocol)」をサポートします。これにより、Salesforce内の異なるAIエージェントはもちろん、将来的には他社製のAIエージェントとも連携し、協調して動作する「A2A(Agent To Agent)」の世界を実現します。企業は、自社内に閉じたAI活用に留まらず、より広範なAIエコシステムの中で、最適なエージェントを組み合わせて利用できるようになります。
3. Atlasアーキテクチャ:オープンな設計で他社LLMにも対応
刷新された基盤技術である「Atlasアーキテクチャ」の採用も、大きな特徴です。このオープンな設計により、企業はSalesforceのAIだけでなく、他社製のLLM(大規模言語モデル)も柔軟に選択し、活用することが可能になります。これにより、特定のベンダーに縛られることなく、自社の業務や課題に最も適したAIモデルを自由に利用できるという、戦略的な柔軟性がもたらされます。
「信頼できるAI」が拓く、エンタープライズ活用の未来
Salesforceが「Agentforce 3」で提示したこれらの機能は、AIエージェントの社会実装を本格化させる上で、極めて重要な意味を持ちます。
なぜ「可視性」と「制御性」が重要なのか
AIエージェントが処理する業務が、企業の基幹業務や顧客との重要な接点であればあるほど、そのプロセスは透明で、管理可能でなければなりません。「Agentforce Command Center」によって「可視性」と「制御性」が確保されて初めて、企業はコンプライアンスを遵守し、リスクを管理し、そして顧客や社会からの信頼を維持することができます。これは、AIを「便利だがリスクのあるツール」から、「事業を支える信頼できる業務パートナー」へと昇華させるための絶対条件です。
オープン性がもたらす健全な市場形成
「Atlasアーキテクチャ」が実現するオープン性は、企業に選択の自由をもたらし、ベンダーロックインのリスクを低減します。健全な競争環境が生まれることで、AIエージェント市場全体の技術革新とコスト最適化が促進されることも期待できるでしょう。
まとめ
Salesforceが発表した「Agentforce 3」は、AIエージェントの導入・拡張における「可視性」と「制御性」という、エンタープライズが抱える根深い課題に正面から応える画期的なソリューションです。「Agentforce Command Center」による監視・制御、MCPによる連携、そして「Atlasアーキテクチャ」によるオープン性。これらの新機能により、企業は安心してAIエージェントを全社的に活用する道が開かれました。
AIエージェントは、もはやその能力を問う段階から、いかに信頼し、いかに管理するかという「ガバナンス」を問う段階へと進化しています。「Agentforce 3」は、その新しい時代の標準を定義する、重要な一歩となるに違いありません。
出典:PR TIMES
