生成AIの「わかったふり」を克服：ヴェルトが「因果AIアシスタント」発表、AIエージェントと因果推論を融合

2025年11月13日、株式会社ヴェルトは、同社のコーザルAIプラットフォーム「xCausal™（クロス・コーザル）」の新機能として、「コーザルAIアシスタント機能」を発表しました。

この発表は、一般的な生成AIの弱点である「わかったふり（ハルシネーション）」を、原因と結果の繋がりを理解する「因果推論」技術で補完するという、AIエージェントの進化における重要な一歩を示すものです。

生成AIの「わかったふり」という課題

生成AIのビジネス活用が進む一方で、その信頼性に関する課題も浮き彫りになっています。現在の生成AIの多くは確率論に基づいているため、一見流暢でそれらしい回答を生成しますが、その内容に論理的な根拠が欠けていたり、事実と異なる情報を生成したりすることがあります。

特に、医療、金融、製造業といった専門分野では、「なぜその結論に至ったのか」という説明可能性や、毎回同じ条件で同じ結論を導き出す再現性が不可欠です。この信頼性の欠如が、AIを企業の重要な意思決定プロセスに組み込む上での、大きな障壁となっていました。

「因果AI（因果推論）」がもたらす説明可能性

ヴェルトが発表した「コーザルAIアシスタント」は、この課題に対する明確な答えを提示します。これは、AIエージェントが持つ柔軟な対話能力と、「因果AI」とも呼ばれる因果推論の技術を融合させた、新しいアプローチです。

因果推論とは、「Aが起きたからBが起きた」という原因と結果の繋がりを、データから統計的に、あるいは論理的に解明する技術です。この技術をAIエージェントに組み込むことで、AIの回答は単なる「確率的にもっともらしい言葉の連なり」から、「なぜなら〇〇という原因があるから、△△という結論になる」という、論理的な根拠を持つものへと進化します。

熟練者の「暗黙知」をデジタル化し、技術継承を実現

この「コーザルAIアシスタント」が目指す最大の目的は、高度人材、すなわち専門家や熟練者が持つ「暗黙知」のデジタル化と継承です。

多くの企業では、ベテランの技術者が持つ「なぜ、その状況で、その判断を下すのか」という高度な思考プロセスが属人化しており、組織としての技術継承が大きな経営課題となっています。

ヴェルトのソリューションでは、「因果知識抽出エージェント群」や「自律型因果モデリングエージェント群」など、複数のAIエージェントが連携。熟練者の思考プロセスそのものを「因果モデル」としてデジタル化し、組織知として蓄積します。これにより、組織内の誰もが、AIアシスタントを通じて、熟練者の知見や思考プロセスにアクセスし、説明可能性と再現性のある高精度な結論を得られるよう支援します。

継続的に進化するプラットフォーム

このプラットフォームは、企業のドキュメントを参照しながら因果関係に基づいた回答を行う「コーザルRAG」機能や、専門家がAIの判断を修正・フィードバックすることでAIが継続的に進化する「Human-in-the-Loop」設計も採用しています。

まとめ

株式会社ヴェルトの「コーザルAIアシスタント」は、AIエージェントの活用が、単なる業務効率化から、企業の「知」の継承や、高度な意思決定支援といった、より戦略的な領域に進んでいることを示す先進的な事例です。

生成AIの「それらしい嘘」や信頼性の低さに悩まされている企業にとって、因果AIとの融合は、AIエージェントを真のビジネスパートナーとするための、重要な技術トレンドとなるでしょう。

出典: PR TIMES