大阪市のAIエージェント活用事例|通勤届業務を最大40%短縮

自治体や企業のバックオフィスにおいて、紙の書類や複雑な規定に基づく申請・審査業務は、担当者の大きな負担となっています。大阪市と株式会社日立製作所は、AIエージェントを活用することで、この煩雑な業務プロセスを効率化する実証実験を行いました。
本記事では、この実証実験の内容や具体的な4つのユースケース、そして今後の展望を解説します。
大阪市×日立AI実証の概要
大阪市と日立製作所は、行政業務におけるAIエージェントの有効性を確認するため、共同で実証実験に取り組みました。この取り組みの概要は以下の通りです。
- 発表日:2026年3月26日
- 対象業務:総務局所管の通勤届の申請・審査業務
- 実証期間:2025年9月〜2026年3月(6カ月間)
- 役割分担:
- 大阪市:業務選定、フロー情報提供、検証評価
- 日立製作所:フロー分析、システム設計構築、効果検証
本プロジェクトはあくまで「実証実験」の段階であり、システムの運用が開始された状態ではない点にご留意ください。

なぜ通勤届業務が選ばれたのか
年間1万件の煩雑な業務
今回の実証対象となった通勤届業務は、大阪市において年間約10,000件もの申請が発生します。特筆すべきは、その件数の約半数が年度替わりの4月に集中する点です。
申請者は、複雑な通勤規程やマニュアルを読み解きながら書類を作成する必要があります。一方で審査者側は、過去の認定実績や複雑な経路検索を人手で一つひとつ照合しており、双方にとって極めて負荷の高い業務となっていました。
AI導入の難しさ
自治体の業務プロセスにAI(人工知能)を導入する際は、民間企業とは異なる高いハードルが存在します。住民の個人情報の厳重な管理はもちろん、行政手続きにおける絶対的な公平性や、AIの回答に対する説明責任が求められるためです。そのため、AIに全権を委ねるのではなく、「人間による最終判断」を前提としたエージェント設計が不可欠でした。

4つのAI活用ユースケース
本実証では、業務フローを4つの工程に分解し、それぞれのステップにAIエージェントを組み込む設計がとられました。人間が最終判断を行い、AIがその「下調べ」や「ナビゲーション」を担うことで、正確性と効率性を両立させています。
申請ナビゲーション
申請者が規程を理解しきれないことによる記入ミスを防ぐため、対話形式で必要事項をナビゲートする仕組みです。AIが申請者に対して「次に何を入力すべきか」を丁寧に誘導します。
審査支援の3機能
審査者の業務を支援するため、以下の3つの機能を提供しました。
- 申請内容チェック:提出された申請書類に不備がないかをAIが自動で確認。
- 認定可否の判定サポート:規程に基づいた基準に照らし合わせ、認定の可否をAIが推奨。
- 払戻計算サポート:通勤経路の変更などに伴う複雑な払戻金額をAIが算出。
これらはすべて、最終的に職員が内容を確認・承認するプロセスを経て完了します。AIはあくまで補助的な役割に徹し、人間が責任を持つことで、行政手続きの信頼性を担保しています。

実証結果:業務時間40%短縮
6カ月間の検証により、業務プロセスにおけるAI活用の有効性が確認されました。以下の表に実証の結果をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象業務 | 通勤届の申請・審査業務 |
| 実証期間 | 2025年9月〜2026年3月 |
| 効果 | 業務時間を最大約40%短縮できる可能性を確認 |
※上記は実証実験による結果であり、あくまで将来的な導入に向けた可能性を示したものです。現時点で恒常的に業務時間が削減されているわけではありません。

今後の展開:全庁導入の検討
オンライン追加実証
今回の成果を受け、2026年度には行政オンラインシステムでの審査業務に適用範囲を拡大し、さらなる検証を継続する予定です。
民間への参考ポイント
自治体でのこの取り組みは、民間企業にとっても大きなヒントになります。業務全体をAIで自動化しようとせず、「申請時のナビゲーション」や「審査時の計算サポート」のように、工程を細かく分解して部分的にAIエージェントを組み込む手法は非常に再現性が高いといえます。他社のAIエージェント活用事例については、当サイトの解説記事で詳細を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
2026年度以降は、今回検証した仕組みを全庁的に導入するための検討が本格化します。
まとめ
大阪市と日立製作所によるAIエージェント実証実験のポイントをまとめます。
- 通勤届業務において、AIの活用で最大約40%の業務時間短縮の可能性を確認した。
- 「申請者ナビ」「内容チェック」「判定サポート」「払戻計算」という4つの工程でAIを活用。
- すべて自動化するのではなく、人間が最終判断する「人とAIの協働」を前提に設計されている。
- 工程を分解して部分的にAIを組み込む設計は、自治体・企業問わず業務改善の有効な手段となる。
まずは自社の業務フローを細分化し、AIエージェントが貢献できるポイントを探ることから始めてみましょう。
出典:株式会社日立製作所 プレスリリース(2026年3月26日)/大阪市 報道発表資料(2026年3月26日)
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