【AIエージェントの思考法】ReActとは?「Reason+Act」の仕組みを徹底解説

AIエージェントが自律的にタスクを実行できるのはなぜでしょうか?
私たちが「競合のレポートを作成して」と曖昧な指示を出すだけで、AIがWebを検索し、データを分析し、資料を作成できるのは、その内部に強力な「思考プロセス」が実装されているからです。

その最も重要かつ基本的な「思考の型」こそが、「ReAct(リアクト)」と呼ばれるフレームワークです。

本記事では、AIエージェントの頭脳そのものと言える「ReAct」がどのような概念なのか、その仕組みと重要性、そしてAIエージェント開発にどう活かされているのかを、初心者にも分かりやすく徹底的に解説します。

ReActとは? AIエージェントに「思考と行動」を与える仕組み

ReActは、「Reason(思考)」「Act(行動)」という2つの単語を組み合わせた造語であり、AIエージェントに人間のような問題解決能力を与えるためのフレームワーク(思考パターン)です。

この概念は、AIエージェントが「ただ応答する」だけのチャットボットから、「自ら考え、行動し、目的に向かう」自律的な存在へと進化するために不可欠な役割を果たします。

従来のLLMの限界:「行動」ができない「脳」

従来のChatGPTのような大規模言語モデル(LLM)は、膨大な知識を持つ「脳」に例えられます。しかし、それは「瓶詰めの脳」であり、自ら「行動」(Webで検索する、データベースを調べる、メールを送るなど)を起こすことができませんでした。

ReActが実現すること:「思考」と「行動」のループ

ReActは、この「脳(LLM)」に「手足(ツール)」を与え、それらを連携させるための「思考プロセス」を定義します。

AIエージェントはReActの思考プロセスに従い、以下のループを高速で繰り返すことで、自律的にタスクを遂行します。

  1. Reason (思考): 現在の状況と目標を分析し、「次に何をすべきか?」という計画(思考)を立てる。
  2. Act (行動): 思考に基づいて、最も適切と判断したツール(行動)を実行する。(例:Web検索、API呼び出し、コード実行)
  3. Observe (観察): 行動の結果(ツールの実行結果)を観察する。
  4. Go to 1. (ループ): 観察結果を踏まえ、「目標は達成できたか?」「次はどの行動を取るべきか?」と、再び「思考」に戻る

この「思考 → 行動 → 観察 → 再思考」という循環こそが、AIエージェントの自律性を支えるReActの核心です。

ReAct(Reason+Act)の具体的な動作プロセス

ReActがAIエージェント内部でどのように動いているのか、具体的なタスク(「今日の東京の天気と、その天気に合う服装を教えて」)を例に見ていきましょう。

ユーザーの指示

「今日の東京の天気と、その天気に合う服装を教えて」

AIエージェント(ReAct)の内部プロセス

【ループ 1】

  • Thought (思考): ユーザーは「東京の天気」と「服装」という2つの情報を求めている。私は天気情報を知らない。まず「東京の天気」を調べる必要がある。
  • Action (行動): search(query="今日の東京の天気") というツール(Web検索)を実行する。

【ループ 2】

  • Observation (観察): ツールの実行結果として「今日の東京の天気は最高気温20℃、最低10℃、晴れ時々曇り」という情報を得た。
  • Thought (思考): 1つ目の情報(天気)は得られた。次は2つ目の「服装」について考える必要がある。天気情報(20℃/10℃、晴れ)を基に、服装を提案しよう。
  • Action (行動): generate_clothing_advice(weather="最高20℃, 最低10℃, 晴れ") というツール(服装提案LLM)を実行する。

【ループ 3】

  • Observation (観察): ツールの実行結果として「日中は長袖シャツや薄手のニット、朝晩は冷えるためジャケットやトレンチコートがおすすめです」という情報を得た。
  • Thought (思考): ユーザーが求めていた「天気」と「服装」の両方の情報が揃った。これで最終的な回答を生成できる。
  • Action (行動): final_answer(answer="今日の東京の天気は最高気温20℃、最低10℃、晴れ時々曇りです。服装は、日中は長袖シャツや薄手のニット、朝晩は冷えるためジャケットやトレンチコートがおすすめです。") を実行する。

このように、AIエージェントはReActのフレームワークに従い、自らタスクを分解し、ツールを使いこなし、答えを組み立てているのです。

ReActがAIエージェント開発にもたらす3大メリット

ReActを導入することで、AIエージェントは単なるチャットボットと一線を画す、高度な能力を獲得します。

1. 信頼性と透明性の向上

AIエージェントが最終的な回答に至るまでの「思考プロセス(Thought)」が、ログとして明確に残ります。これにより、AIがなぜその結論に至ったのかを人間が追跡・デバッグすることが可能になり、システムの信頼性が飛躍的に向上します。

2. 複雑なタスクの実行(タスク分解)

「市場調査レポートを作成して」といった曖昧で複雑な指示に対し、AIエージェントはReActの思考ループを使って、それを「競合リストアップ」「各社の情報検索」「比較表の作成」「結論の要約」といった小さなタスクに自動で分解し、一つずつ着実に実行できます。

3. LLMの弱点(ハルシネーション)の克服

LLMは「事実と異なる情報(ハルシネーション)」を生成することが弱点です。ReActは、LLMが「知ったかぶり」で答えることを防ぎ、「分からないことは、まずツール(Web検索など)を使って調べる」という行動を強制します。これにより、回答の正確性と事実への準拠性が格段に向上します。

ReActと他のAIエージェント技術との関係

ReActは、他の多くのAIエージェントフレームワークの「基礎」として機能しています。つまり、ReActはAIエージェントの「個の知性」の核であり、LangGraphやCrewAIといった高度なフレームワークも、その内部ではReActの原理に基づいた「思考と行動のループ」を実行しているのです。

技術・フレームワーク ReActとの関係(役割分担)
ReAct AIエージェントの「基本OS」

「思考→行動→観察」という個の基本的な認知サイクルを定義する。

LangChain (LCEL) ReActを実装するための「部品」

ReActの「行動(Act)」で使われるツール(Web検索、DB接続)やプロンプトを部品化し、繋ぎやすくする。

LangGraph ReActの「ループ」を制御する回路

ReActの「思考ループ」や「条件分岐」を、グラフ構造(状態機械)として堅牢に実装・管理するためのライブラリ。

AutoGen / CrewAI ReActを応用した「組織」

ReActの思考プロセスを持つ複数のAIエージェントを「チーム」として協調させる、より高レベルなフレームワーク。

 

まとめ

本記事では、AIエージェントの「思考法」である「ReAct」について解説しました。ReActは、AIエージェントに「思考(Reason)」と「行動(Act)」を結びつけ、自律的なタスク遂行を可能にする核心的なフレームワークです。

「AIが自ら考え、ツールを使い、結果を観察し、また考える」

このReActのループを理解することは、AIエージェントがどのように動作しているのか、そして今後どのように進化していくのかを理解する上で不可欠です。AIエージェントという新しいパートナーを使いこなす第一歩として、この「ReAct」の概念をぜひ覚えておいてください。

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