日立とGoogle Cloudがタッグ！現場作業をAIエージェントが支援する未来

2025年10月10日、株式会社日立製作所は、Google Cloudとの戦略的アライアンスに基づき、現場の最前線で働くフロントラインワーカーの業務変革を加速させるため、AIエージェントの開発を推進すると発表しました。

この提携は、日立が持つ製造・インフラ分野の深い知見と、Google Cloudの最先端AI技術を融合させるものです。
AIの活用が、オフィスワークから物理的な「現場」へと大きく広がる、新たな時代の幕開けを告げています。

日立とGoogle Cloud、両社の強みを融合させる戦略的アライアンス

製造業大手の日立製作所と、ITの巨人Google Cloud。両社が、AIエージェントの社会実装を加速させるための、強力なタッグを組みました。この戦略的アライアンスの目的は、これまでデジタル化が困難とされてきた、インフラや産業の現場における、高度な課題解決を実現することにあります。

「現場の知見」と「最先端AI」の融合

この協業の核心は、両社が持つ、互いを補完する強みの融合にあります。

• 日立製作所の強み: 長年にわたり、鉄道、電力、工場といった社会インフラや産業分野で培ってきた、OT（制御技術）とITに関する深いドメイン知識（現場の知見）。
• Google Cloudの強み: 世界をリードする生成AI技術や、膨大なデータを処理・分析するためのクラウド基盤。

日立の「現場を理解する力」と、Google Cloudの「データを知識に変える力」。この二つが組み合わさることで、机上の空論ではない、現場で本当に役立つ実用的なAIエージェントソリューションが生まれるのです。

ターゲットは「フロントラインワーカー」：技能伝承から安全性向上まで

今回の提携が特に注目すべきは、そのターゲットを、オフィスワーカーではなく、製造、建設、保守点検といった現場の最前線で働く「フロントラインワーカー」に定めている点です。

AIエージェントが現場の課題を解決

この協業で開発されるAIエージェントは、現場特有の、深刻かつ複雑な課題の解決を目指します。

• 熟練者の技能伝承: AIが熟練技術者の作業手順や判断基準を学習し、若手作業員に対して、ARグラスやタブレットを通じてリアルタイムで指示や助言を与える「デジタル指導員」として機能します。これにより、人手不足と高齢化に悩む現場での、貴重な技能の伝承を支援します。
• 作業効率化: 複雑な設備の修理やメンテナンス作業において、AIが状況に応じた最適な手順書を提示したり、必要な部品の情報を瞬時に提供したりすることで、作業時間の大幅な短縮とミスの削減に貢献します。
• リスク危険予知: 現場に設置されたカメラやセンサーの情報をAIが常に監視し、危険な状況や事故の予兆を事前に検知して、作業員に警告を発します。これにより、現場の安全性が向上します。

日立は、これらのソリューション開発において、同社が開発した次世代AIエージェント「Naivy」などを活用していく方針です。

「ドメイン知識 × AI」が拓く、製造業DXの新たな可能性

日立とGoogle Cloudの提携は、AI時代の製造業DXを成功させる上で、極めて重要な示唆を与えてくれます。それは、AI技術そのものの性能だけでなく、「いかにして、それを現場の深い知識と組み合わせるか」が成功の鍵を握る、という事実です。

AI活用の本質

汎用的なAIは、それだけでは現場の複雑な課題を解決できません。そのAIに、業界特有の専門用語、長年の経験から得られた暗黙知、そして現場の物理的な制約といった「ドメイン知識」を学習させて初めて、AIは真に役立つ「賢いアシスタント」となり得るのです。

今回の提携は、この「ドメイン知識 × AI」という、AI活用の本質を体現するモデルケースと言えるでしょう。

まとめ

日立とGoogle Cloudの戦略的提携は、AIエージェントがオフィスを飛び出し、製造やインフラといった物理的な現場の課題を解決する、大きな潮流の始まりを告げるものです。フロントラインワーカーを支援するAIの登場は、日本の製造業DXを大きく前進させ、深刻な人手不足や技能伝承といった社会課題の解決にも貢献することが期待されます。

自社が持つ独自の「現場の知見」こそが、AI時代における競争力の源泉となる。日立のこの先進的な取り組みは、AIの導入を検討するすべてのBtoB企業にとって、自社の強みを再認識し、新たなAI戦略を描くための、重要なヒントとなるでしょう。

出典：PR TIMES