あなたの会社のSaaSもAI搭載へ - SmartHRの「AIアシスタント」に学ぶ次世代の業務ツール
クラウド人事労務ソフト大手の株式会社SmartHRは2025年6月24日、同社のSaaSプラットフォーム内で利用できる「AIアシスタント」機能を、2025年7月下旬に提供開始すると発表しました。
この動きは、AIエージェントが独立したツールとしてではなく、多くの企業が日常的に利用する既存のSaaSに「標準機能」として組み込まれていく、新しい時代の到来を象徴しています。
SmartHRが拓く、人事労務DXの新章:「AIアシスタント」機能とは
多くの企業の人事・労務業務を支える「SmartHR」が、その利便性をさらに高めるための大きな一歩を踏み出しました。今回発表された「AIアシスタント」機能は、バックオフィス業務の中でも特にコミュニケーションコストが高い、社内問い合わせ対応の課題を解決するために開発された、強力なAIエージェントです。
多くの企業が使う「SmartHR」から始めるAI活用
この新機能の大きな特徴は、既存の「SmartHR」プラットフォームに統合される形で提供される点です。これにより、企業は新たなツールを導入するための複雑な選定や契約、セキュリティ審査といったプロセスを経ることなく、使い慣れた環境でスムーズにAIの活用を開始できます。多くの企業にとって、AI導入のハードルを大きく下げるアプローチと言えるでしょう。
目的は人事労務部門と全従業員の生産性向上
このAIアシスタントの目的は、二つの側面にあります。一つは、人事・労務部門の担当者が、日々寄せられる定型的な問い合わせ対応から解放され、より専門的で戦略的な業務に集中できるようにすること。もう一つは、全従業員が人事・労務に関する疑問をいつでも自己解決でき、社内手続きをスムーズに行えるようにすることで、組織全体の生産性を向上させることです。
社内問い合わせを自動化!具体的な機能と企業が享受するメリット
SmartHRの「AIアシスタント」は、単に質問に答えるだけでなく、企業が安心して利用できるための管理機能や、継続的な改善を促す仕組みを備えています。
AIが社内規程の専門家に
このAIエージェントの頭脳となるのは、企業がアップロードした独自の社内ドキュメントです。管理者が就業規則や各種申請手続きのマニュアルなどをアップロードすると、AIがその内容を学習。従業員がチャット形式で「育児休業の申請方法を教えてください」といった質問を投げかけると、AIが学習した内容に基づいて、24時間365日、いつでも自動で回答します。
信頼性を担保する管理機能
企業がAIを利用する上で、情報の正確性とセキュリティは不可欠です。「AIアシスタント」は、この点にも配慮した設計となっています。
- 情報源の明記: AIが回答を生成する際に、どのドキュメントのどの部分を参照したのか、情報源を明確に提示します。これにより、ユーザーは情報の信頼性を自身で確認できます。
- アクセスコントロール: 役職や部署に応じて、アクセスできる情報を制限することが可能です。これにより、機密情報が意図せず漏洩することを防ぎます。
- 利用状況の分析: 管理者は、どのような質問が多く寄せられているかを分析レポートで確認できます。これにより、従業員がつまずきやすいポイントを把握し、マニュアルを改善したり、FAQを充実させたりといった、継続的なナレッジベースの改善に繋げることができます。
AIエージェントは「アドオン」の時代へ:SaaS連携が示す未来
SmartHRによる今回の発表は、単なる一機能の追加に留まりません。AIエージェントが今後、どのようにビジネスの世界に普及していくのか、その未来像を具体的に示す、非常に重要な事例です。
SaaS+AIエージェントという新しい潮流
AIエージェントは、これまで独立した新しいサービスとして提供されることが主流でした。しかし、SmartHRの事例は、AIエージェントが多くの企業が既に利用している主要なBtoB SaaSに、「標準機能」や「有料オプション(アドオン)」として組み込まれていくという、新しい潮流の本格化を示唆しています。ユーザーは、使い慣れたSaaSの延長線上でAIの力を活用できるため、導入と定着がスムーズに進みます。
個別データ連携によるパーソナライズの未来
SmartHRは、将来的な展望として、AIアシスタントを従業員一人ひとりのデータと連携させることを目指しています。これが実現すれば、「私の次の有給休暇はいつから取得できますか?残日数は?」といった、極めて個人的な質問にもAIが即座に、かつ正確に回答できるようになります。これは、AIエージェントによる究極のパーソナライゼーションであり、従業員体験(EX)を劇的に向上させる可能性を秘めています。
まとめ
株式会社SmartHRが発表した「AIアシスタント」機能は、人事労務SaaSという多くの企業にとって身近なプラットフォーム上で、AIエージェントの具体的な価値を提供するものです。社内問い合わせ業務の自動化は、バックオフィス部門のDXを大きく前進させ、組織全体の生産性向上に貢献します。
そしてこの事例は、BtoB企業にとって重要な示唆を与えてくれます。それは、自社が現在利用しているSaaSベンダーが、どのようなAI戦略を描いているかに注目すべきだということです。使い慣れたツールがAIの力で進化していく。そんな「AIアドオン時代」の波に乗り遅れないことが、今後の業務効率化と競争力強化の鍵となるでしょう。
出典:PR TIMES
