製薬DXの切り札、Veevaが「AIエージェント」提供開始|MR業務と審査を自動化

2025年12月3日、ライフサイエンス業界向けクラウド大手のVeeva Japan株式会社は、製薬企業向けの「Veeva AI Agents」の提供開始を発表しました。

これは、同社のCRMやコンテンツ管理システムに統合され、MR(医薬情報担当者)の日報入力や、販促資材のコンプライアンス審査といった専門業務を自律的に支援するものです。
規制の厳しい製薬業界において、AIが単なるツールから「頼れる同僚」へと進化する、象徴的な事例と言えます。

記録するだけのSaaSから、自律的に動く「System of Intelligence」へ

Veevaはこれまで、顧客データや文書を管理する「System of Record(記録のためのシステム)」として業界標準の地位を築いてきました。しかし、今回のAIエージェントの導入により、システムはデータを記録するだけの場所から、データに基づいて次のアクションを提案・実行する「System of Intelligence(知能のためのシステム)」へと進化しました。

ユーザーとシステムの主従逆転

これまでは、人間がシステムを「操作」してデータを入力していました。しかし、Veeva AI Agentsは違います。

蓄積されたデータを基に「この医師には次にこの話題を話すべき(Pre-call Agent)」と提案したり、入力されたデータに不備がないかを自律的にチェックしたりします。システム側からユーザーに能動的に働きかけることで、MRやマーケティング担当者は、システム操作の時間から解放され、本来の戦略的な業務に集中できるようになります。

MRの日報から資材審査まで。現場特化型エージェントの実力

Veeva AI Agentsの最大の特徴は、汎用的なチャットボットではなく、製薬業界特有の商習慣や業務フローに完全に適合した「特化型」である点です。

MRの負担を減らす日報支援

多忙なMRにとって、訪問後の日報入力は大きな負担でした。AIエージェントは、音声入力された内容を解析し、構造化された日報データとしてCRMに自動登録します。移動中の隙間時間を活用でき、報告業務の効率化とデータの即時化を両立させます。

コンプライアンス審査を高速化する「Quick Check Agent」

製薬業界では、販促資材の表現に極めて厳格な規制が課せられます。新機能「Quick Check Agent」は、人間による審査(MLRレビュー)の前に、AIが誤字脱字や不適切な効能表現、参照文献の不整合などを自動で検出します。これにより、人間はより高度な判断が必要な審査に集中でき、資材作成から承認までのリードタイムを大幅に短縮できます。

規制産業だからこそ求められる「Human-in-the-loop」設計

金融や医療と同様、ミスが許されない製薬業界では、AIの回答精度(ハルシネーションの防止)が最大の課題です。Veevaはこの課題に対し、プラットフォームの強みを活かした解決策を提示しています。

信頼できるデータソースと監査証跡

AIエージェントは、Veevaのプラットフォーム内にある「信頼できるデータソース」のみを参照して回答を生成します。また、誰が(どのエージェントが)いつ何をしたかというログが厳密に管理されるため、監査対応も万全です。

最終判断は人間が

Veevaのアプローチは、AIにすべてを任せるのではなく、あくまで人間の判断を支援する「Human-in-the-loop(人間が介在する)」設計を徹底しています。AIが下準備や一次チェックを行い、最終的な承認は人間が行う。この役割分担により、安全性と効率性を両立させています。

まとめ

Veeva Japanによる「Veeva AI Agents」の提供開始は、バーティカルSaaS(業界特化型クラウド)におけるAI活用の模範的な事例です。

業界特有の規制や業務フローを深く理解し、既存のシステムにAIエージェントを組み込むことで、現場の生産性を劇的に向上させる。このアプローチは、製薬業界に限らず、専門性の高い業務を持つすべてのBtoB企業にとって、DX推進の重要なヒントとなるでしょう。今後は臨床開発や品質管理領域への拡大も予定されており、ライフサイエンス業界全体の変革が期待されます。

出典: PR TIMES

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