Kimiに学習させない方法は?停止申請の手順とデータ保存先

Kimiに入力したプロンプトや社内データが、AIの学習(モデルの最適化)に使われるかどうかは、仕事で使う人にとって最初に確かめたい点です。Kimiは利用する入口によって契約する会社も規約も違うため、答えは一つではありません。本記事では入口ごとの学習利用の扱いと、それを止める手順、データの保存先を公式規約から確認します。
Kimiは入口が3つあり契約相手が違う
Kimiを利用する際、最も注意すべき点は「どのURLからアクセスしているか」によって、適用される利用規約やプライバシーポリシー、さらには契約の相手方となる法人までが異なるということです。これらを混同すると、適切なデータ保護措置を講じることができません。
利用入口の確認
Kimiの利用形態はアクセスするドメインによって3つに分かれ、契約の相手方になる法人も異なります。
- 国際版(kimi.ai):シンガポール法人「NOVASCENT PRIVATE LIMITED」
- 中国版(kimi.com):北京の「北京月之暗面科技有限公司(Beijing Moonshot Technology Co., Ltd.)」
- API利用(platform.kimi.ai):シンガポール法人「MOONSHOT AI PTE. LTD.」
どのドメインにログインし、どの法人の規約に同意しているかの特定が、安全な運用の第一歩です。
日本語UIと英語規約
国際版(kimi.ai)はUIが日本語に対応しているため、日本のユーザーにとっても非常に使いやすい設計になっています。しかし、法的拘束力を持つ国際版の利用規約や国際版のプライバシーポリシーは、2026年8月時点でも英語(または中国語)のみでの提供となっており、日本語の正式な規約は存在しません。日本語UIに油断せず、データの扱いは必ず原文の規定で確認する必要があります。

国際版で学習利用を止める手順
日本のビジネスユーザーが最も利用する可能性が高いのが、この国際版です。国際版では、デフォルトの設定においてユーザーの入力内容がサービス向上のために利用される仕組みになっています。
既定の学習利用
国際版の規約では、ユーザーが入力したプロンプト、音声、画像、動画、アップロードしたファイルといった「コンテンツ」が、AIモデルの学習や最適化に使用されることが明記されています。ここで重要なファクトは、データの保存先に関する記述です。プライバシーポリシーには「居住国外のサーバーに移転・保存されることがある」との記載がありますが、具体的な保存先の国名(シンガポールや米国など)は一切明記されていません。ポリシーに特定の国名が書かれていないという事実そのものが、透明性の観点から重要な検討材料となります。
メールでの申請
多くの生成AIサービスでは、設定画面のトグルスイッチ一つで学習利用をオフにできますが、Kimiの国際版(kimi.ai)は異なります。学習利用を停止(オプトアウト)したい場合は、運営元に対して直接メールで申請を行う必要があります。以下の規約条項に従い、指定のアドレスへ連絡してください。
You can opt out of allowing your Content to be used to train the Services by contacting us at membership@moonshot.ai. We will honor your choice in accordance with applicable law. Opt-out applies prospectively only and does not require us to delete or remove Content already used in prior training cycles.
(サービスの内容をトレーニングするためにコンテンツを使用されることを拒否するには、membership@moonshot.aiまでご連絡ください。適用法に従い、お客様の選択を尊重します。オプトアウトは将来分のみに適用され、過去のトレーニングサイクルですでに使用されたコンテンツを削除または除去することを要求するものではありません。)
このように、国際版の運営会社である「NOVASCENT PRIVATE LIMITED」へメールを送るという手動の手続きが必要になる点は、組織導入時の注意点です。
申請後の分のみ停止
申請が受理されても、効果が及ぶのは将来の分だけです。規約は「将来に向かってのみ適用される」と定めており、申請前に入力したデータをさかのぼって削除させたり、学習済みモデルから除外させたりすることはできません。機密情報を入力する「前」に停止申請を終えておく、という順番で運用してください。

中国版(kimi.com)の利用
中国版(kimi.com)は、主に中国国内のユーザーを対象としており、適用される法規制も中国のものが中心となります。
中国国内のデータ保存
中国版の運営主体は「北京月之暗面科技有限公司(Beijing Moonshot Technology Co., Ltd.)」です。中国版のプライバシーポリシーでは、収集された個人情報は中華人民共和国の域内に保存されることが明確に定められています。同じポリシーには、利用者から別途同意を得たうえで関連法令に従う場合を除き、個人情報を中国国外へ提供しないとも書かれています。保存先が明記されている点は国際版より明確ですが、その情報が中国の法規制下に置かれることは理解しておく必要があります。
規約記載先への停止申請
中国版の利用規約でも、既定では入力内容を学習に利用するライセンスが運営側へ付与されます。
TO IMPROVE THE SERVICE, YOU GRANT US A FREE LICENSE TO USE YOUR INPUT, OUTPUT, AND FEEDBACK FOR MODEL OPTIMIZATION WITHIN THE SCOPE PERMITTED BY LAW. IF YOU DO NOT WISH YOUR CONTENT TO BE USED FOR MODEL TRAINING, PLEASE CONTACT US THROUGH THE CONTACT INFORMATION PROVIDED IN THIS AGREEMENT.
(サービスを改善するために、法律で許可される範囲内で、入力、出力、およびフィードバックをモデル最適化に使用するための無料ライセンスを当社に付与するものとします。お客様のコンテンツがモデルトレーニングに使用されることを希望しない場合は、本契約に記載されている連絡先までご連絡ください。)
このように、中国版でも学習拒否には個別の連絡が必要です。規約内の「Contact Us」セクションに記載されている最新の連絡先を確認の上、手続きを行ってください。
API利用は書面合意が必要
システム開発や自社アプリへの組み込みで利用する「Kimi API」については、チャットUI経由の利用とはまた異なるルールが適用されます。
既定の学習利用
API経由での利用であっても、既定の規約では入力データがモデルの改善や学習に利用される可能性が残されています。開発者はAPIの利用規約およびAPIのプライバシーポリシーを精読し、自社のセキュリティ要件を満たしているか確認しなければなりません。運営主体である「MOONSHOT AI PTE. LTD.」の規約は、書面で明示的に別途合意しない限り顧客のコンテンツは前述の目的に使われうる、と定めています。設定画面で拒否する仕組みは用意されていません。
シンガポールの保存先
国際版(kimi.ai)では保存先の国名が伏せられていましたが、API利用に関しては、データの保存先が「シンガポール」のサーバーであることが明記されています。このポリシーに「中国」という語は出てきません。保存先が明示されている点は、社内のクラウドサービス利用審査で国際版より説明しやすい材料になります。
個別契約の相談
API経由の入力を学習に使わせないためには、標準の規約に同意するだけでは足りず、法人としての書面合意が要ります。機密性の高い案件でKimi APIを採用するなら、オンラインの手続きだけで済ませず、「学習に利用しない」旨を明文化した契約を運営元と交わしてください。
送信を避けるローカル実行
外部のクラウドサーバーにいかなるデータも送信したくないという究極のセキュリティ要件がある場合は、モデルを自社環境で動かす「ローカル実行」が唯一の解決策となります。
Kimi K3の重み公開
Kimiシリーズの最新モデルである「Kimi K3」は、モデルの重み(Weight)がHuggingFace上で公開されています。これにより、適切なハードウェアを用意すれば、自社のデータセンターやローカルPC上でKimiを実行することが可能です。詳細なライセンス条件については、Kimi K3のライセンス原文を確認してください。ただし、Kimi K3は大規模なパラメータを持つモデルであるため、これを実用的な速度で動作させるために必要な計算資源(GPUメモリ等)は決して小さくない、という点には留意が必要です。
独自ライセンスの確認
Kimi K3を自社環境で利用する際には、公開されている独自のライセンス条項を遵守する必要があります。特に商用利用や大規模ユーザー向けの展開においては、以下の条件が設定されています。
| 条件項目 | 具体的な内容・数値 | 対象外(制約なし)となるケース |
|---|---|---|
| 別途契約が必要になる場合 | モデルの推論やファインチューニングを第三者に提供する事業(Model as a Service)を営み、かつ自社と関連会社の合計売上が連続する12か月で2,000万米ドルを超える場合 | モデル・出力・その能力を第三者に提供しない社内利用 |
| UIへの表示義務 | 月間アクティブユーザー1億人超、または月間売上2,000万米ドル超の商用製品・サービスで使う場合は、その画面に「Kimi K3」を目立つ形で表示する | モデル・出力・その能力を第三者に提供しない社内利用 |
このように、一定規模以上のビジネス展開を行う場合には、開発元の許可や契約が必要となります。
会社利用時の線引き
企業がKimiを導入する際は、どの「入口」を選び、どのような情報なら入力してよいかという「線引き」を明確にガイドライン化することが重要です。
入口ごとの違い一覧
各入口における主要な情報を以下の表にまとめました。
| 入口 | 主な運営会社と所在 | 学習への利用(既定) | 学習を止める手段 | データの保存先 |
|---|---|---|---|---|
| 国際版 (kimi.ai) | NOVASCENT PRIVATE LIMITED (シンガポール) | 利用される | 指定アドレスへのメール連絡 | 明記なし (居住国外とだけ記載) |
| 中国版 (kimi.com) | 北京月之暗面科技有限公司 (中国) | 利用される | 規約記載の連絡先へ申請 | 中国国内 |
| API利用 | MOONSHOT AI PTE. LTD. (シンガポール) | 利用される可能性あり | 法人としての個別契約相談 | シンガポール |
| ローカル実行 (K3) | (自社運用) | 利用されない | 手続き不要 | 自社環境内 |
入力禁止情報の策定
学習停止を申請しても、クラウドサービスである以上、情報漏洩のリスクはゼロになりません。そのため、「顧客の個人情報」「未発表の製品仕様」「ソースコードの核心部分」など、Kimiには絶対に入力しない情報の定義を先行して行うべきです。
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まとめ
- 国際版(kimi.ai)の運営はシンガポールの「NOVASCENT PRIVATE LIMITED」で、学習停止はメール申請のみ(保存先の国名はポリシーに記載なし)
- 中国版(kimi.com)は「北京月之暗面科技有限公司」が運営し、データは中国国内に保存されます。
- API利用時のデータ保存先はシンガポールですが、学習停止には個別契約の相談が推奨されます。
- 「Kimi K3」をローカル実行すれば外部へのデータ送信は防げますが、相応の計算資源が必要となります。
- 社内導入にあたっては、まず利用する「入口」を一つに絞り、学習停止手続きを完了させた上で、入力禁止データのガイドラインを策定してください。




