2030年までに「AIエージェントがEC売上の約4分の1を担う」という予測を発表

画像の出典:A.T. カーニー(PR TIMES)
デジタル化が進む現代の購買プロセスにおいて、AIが単なる検索ツールから「自律的な購入代行者」へと進化しようとしています。BtoB企業のDX担当者や経営層にとって、顧客がAIを介して商品やサービスを選択する未来は、従来のマーケティングや決済のあり方を根本から見直す必要性を突きつけています。
本記事では、A.T. カーニー(Kearney)が公開した論考に基づき、AIショッピング・エージェントがもたらす経済的インパクトと、企業が備えるべき信頼性の枠組みについて解説します。
エージェンティック・コマースが描く購買の未来
2030年に向けた市場規模の推計
A.T. カーニーは、AIが購買プロセスを自律的に担う「エージェンティック・コマース」に関する論考『エージェンティック・ペイメント――デジタル・コマースの新たなフロンティア』を公開しました。同社は、2030年までにAIショッピング・エージェントが全eコマースの約4分の1を占めるようになると推測しています。この動きにより、年間オンライン売上で約10兆~12兆ドルを動かす可能性があるとみています。
消費者の行動変容も顕著です。Vox Mediaによる2024年の調査では、Z世代の61%が検索エンジンや小売サイトではなく、AIツールを使って商品調査を開始していることが明らかになりました。さらに、別の調査ではZ世代の購買者の82%が購買判断の指針としてAIツールを利用しているとされており、AIが購買の意思決定プロセスに深く浸透している現状が浮き彫りとなっています。
購買プロセスにおける2つのシナリオ
AIによる購買行動は、大きく分けて2つのシナリオで進行すると考えられています。一つは、特定の商品やカートについて最終的な承認を利用者自身が行う「Human present(人間が介在する)」シナリオです。もう一つは、価格帯や商品カテゴリーなど事前に定めた範囲内でAIが自律的に行動する「Human not present(人間が介在しない)」シナリオです。これらのシナリオが混在することで、企業は人間とAI双方の購買行動を想定した顧客体験の設計が求められます。
安全な取引を支える「トラスト・スタック」の構築
普及に向けた3つの主要課題
AIエージェントが社会に広く浸透するためには、解決すべき課題が存在します。A.T. カーニーは、特に重要な要素として「権限」「正確性」「責任」の3点を挙げています。具体的には、エージェントが利用者に代わって支出する際の「権限」の明確化、利用者の意図に沿った商品を購入する「正確性」の確保、そして問題が発生した際の「責任」の所在をどのように定義するかが焦点となります。
信頼性を担保する枠組み
これらの課題を解決し、取引の安全性と信頼性を担保するために、同社は「トラスト・スタック」という枠組みを提唱しています。これは、取引前の本人確認と委任設定から、取引中の認証・リスク判定、さらには取引後の監査ログと責任配分までを一貫してつなぐ仕組みです。
具体的な対応策として、署名付きで取消可能な委任設定や、利用範囲を限定した支払いトークンの活用が挙げられます。また、一定条件を超えた場合に人による確認を求める「Human-in-the-loop(人間が介在するループ)」の閾値設定や、利用者の意図を構造化して確認する仕組み、紛争対応に利用できる証跡の保存、関係者間での共有責任モデルの構築などが重要となります。
企業が取り組むべき決済バリューチェーンの再設計
AIエージェントによる自動購買は、単なる利便性の向上にとどまらず、決済の仕組みそのものを変革する可能性を秘めています。BtoB企業においても、エージェントが介在する取引を前提とした新たな顧客体験の創出と、リスク管理体制の構築が急務です。今後は、AIが購買の主導権を握る時代を見据え、自社のサービスや決済プロセスが「AIにとって選ばれやすい構造」になっているか、あるいは「AIとの取引において十分な信頼性を担保できているか」を検証することが、競争優位性を維持する鍵となるでしょう。
まとめ
- 2030年までにAIショッピング・エージェントが全eコマースの約4分の1を占め、年間10兆~12兆ドル規模の売上を動かす可能性がある。
- 購買プロセスには「Human present」と「Human not present」の2つのシナリオが存在し、決済の再設計が求められる。
- 安全な拡大には「権限」「正確性」「責任」の3課題を解決する「トラスト・スタック」の構築が不可欠である。
- 企業はAIエージェントを前提とした顧客体験の創出と、リスク管理体制の早期構築に着手すべきである。
💡 編集部の見解
コンサルティング会社のA.T. カーニーが、2030年にはネット通販の4件に1件を、人ではなくAIが選んで買っているかもしれない、という予測を出しました。あくまで予測で、決まった話ではありません。
- もう始まっているのは調べる側:若い世代の6割が、検索やネットショップではなくAIに聞いて商品を探し始めています(2024年の調査)。2030年の予測と違って、こちらはすでに測られた数字です。
- AIに読まれる前提になる:商品を売る会社はこれまで、人に見つけてもらうために情報を整えてきました。AIが商品を選ぶ場面が増えると、AIが自社の情報を正しく読めるかどうかが同じくらい効いてきます。
まずやること:自社の商品やサービスの名前をChatGPTなどのAIに聞いてみて、返ってきた説明が合っているか確かめてください。間違っていれば、その説明がそのまま見込み客に届いています。




