HP製PCが楽天のAIを搭載、機密データを外に出さずAI活用

画像の出典:rakuten.co.jp

業務効率化を目的としたAI導入が進む中、セキュリティと利便性を両立した「オンデバイスAI」の活用が企業のDX推進における新たな焦点となっています。楽天グループと日本HPは2026年7月29日、日本国内で販売するHP製PC向けに、エージェント型AIツール「Rakuten AI for Desktop」をプリバンドル(標準搭載)で提供開始すると発表しました。

本記事では、このハイブリッドAI環境がもたらす業務変革の可能性と、企業が注目すべき技術的背景について解説します。

ハイブリッドAIが実現する次世代の業務環境

ローカル環境で完結する「Rakuten AI 7B」の安全性

「Rakuten AI for Desktop」の最大の特徴は、PC上で直接動作する「オンデバイスモード」を備えている点です。本機能では、楽天が独自に開発した日本語大規模言語モデル(LLM)である「Rakuten AI 7B」がローカル環境で稼働します。インターネット接続を介さないため、機密性の高い社内文書の要約や翻訳といったタスクにおいても、外部へのデータ流出リスクを抑えたセキュアなAI活用が可能です。また、クラウドを介さないことによる低遅延なレスポンスは、日常的な業務スピードを向上させる重要な要素となります。

クラウド連携による楽天エコシステムの活用

一方で、より高度なタスクや外部連携が必要な場合には「クラウドモード」が機能します。本モードでは、楽天が提供する専門AIエージェントや楽天エコシステムとシームレスに接続可能です。これにより、翻訳や要約といった基本的な事務作業にとどまらず、買い物や旅行予約、楽天ポイントの照会といったタスクをリアルタイムで支援します。ローカルでの高速処理と、クラウドでの広範なデータ連携を使い分ける「ハイブリッドAI」の構成により、利用者は状況に応じた最適なAI体験を享受できます。

導入の容易さと今後の展望

購入後すぐに使えるプリバンドル提供

今回の提供形態は、日本国内で販売される法人向けHP製PCへのプリバンドルです。利用者はPC購入後、アプリケーションを有効化するだけで即座にAIエージェントを利用開始できるため、複雑なセットアップやIT部門による大規模な導入支援の手間を大幅に削減できます。法人向けPCについては発表日である2026年7月29日から順次提供が開始されており、企業は導入したその日からAIを活用した業務効率化に着手できる環境が整います。対象となるのは、ゲーミングPCやシンクライアント、一部のワークステーションモデルを除く、Windowsを搭載したHP製PCです。コンシューマー向けPCへの提供は2026年10月以降が予定されています。

「Future of Work」を見据えた両社の戦略

日本HPの代表取締役社長執行役員である岡戸伸樹氏は、本協業がオンデバイスAIとクラウドAIをインテリジェントに組み合わせることで、AI PCが未来の働き方(Future of Work)を支える基盤になると強調しています。また、楽天のChief AI & Data Officer(CAIDO)であるTing Cai氏は、オンライン・オフラインを問わず、常にAIがそばにあり利用できる環境の構築をビジョンとして掲げています。両社は、AI PCの強みを生かしたハイブリッドAIが、今後のビジネスシーンにおいて不可欠な役割を果たすと予測しています。

企業が意識すべきAI PC活用のポイント

セキュリティと利便性のバランス

企業がAIを導入する際、最大の懸念事項となるのがデータプライバシーです。今回の「Rakuten AI for Desktop」のように、ローカル環境でLLMを動かす技術は、機密情報を扱う業務において強力な選択肢となります。DX担当者は、すべてのAI処理をクラウドに依存するのではなく、情報の重要度に応じてローカルとクラウドを使い分けるハイブリッド型の運用設計を検討する必要があります。

業務フローへのAIエージェントの組み込み

単なるチャットボットとしてのAI利用から、タスクを自律的に支援する「エージェント型AI」への移行が加速しています。楽天エコシステムとの連携機能は、事務作業の自動化だけでなく、出張手配や購買管理といった周辺業務の効率化にも寄与します。経営層は、AIを単なるツールとしてではなく、業務プロセスそのものを再構築するパートナーとして位置づけ、既存の業務フローにどう組み込むかを戦略的に考えるべきフェーズに来ています。

まとめ

・楽天と日本HPがHP製PC向けに「Rakuten AI for Desktop」をプリバンドル提供開始
・ローカル環境で動く「Rakuten AI 7B」とクラウド連携によるハイブリッドAIを実現
・法人向けPCは2026年7月29日より順次提供、購入後すぐに利用可能
・機密情報の取り扱いと業務効率化の両立に向け、ハイブリッドAIの活用検討を推奨

💡 編集部の見解

本協業は、AI PCが単なるハードウェアから「業務を自律的に支援するプラットフォーム」へ進化する転換点を示しています。

  • 技術的優位性:ローカルLLMによるプライバシー保護と、クラウド連携による機能拡張というハイブリッド構成が、企業導入の障壁を下げています。
  • 市場の動向:PCメーカーとAIプラットフォーマーの連携は、AIをOSレベルで統合し、業務フローへ深く浸透させるための必然的な流れです。

DX担当者は、自社の業務において「どこまでをローカルで完結させ、どこからをクラウドに任せるか」というハイブリッド運用の設計を急ぐべきです。

出典:rakuten.co.jphp.com