マーケティング業務はどこまでAIに任せる?NoimosAIの自社運用で引いた線

寄稿本記事は、AIマーケティングエージェント「NoimosAI(ノイモスエーアイ)」を提供するAGOS LABS TECHNOLOGIES LTD. マーケティングディレクターの高橋宏和氏によるご寄稿です。
マーケティングにAIエージェントを使おうと考えたとき、多くの方が迷うのは「どこまで任せてよいのか」ではないでしょうか。すべて自動で回るのか、それとも結局は人が手直しすることになるのか。導入する前には、そこがなかなか見えません。
当社はAIマーケティングエージェント「NoimosAI」を提供しながら、自社のマーケティングにも使っています。本記事では、自社のSNS運用、自社ブログのSEO(検索エンジン最適化)、お客様1社の事例という3つの実例をもとに、AIに任せた工程と人が判断し続けている工程の線引き、そして導入で押さえたいポイントをお伝えします。
この記事の実例について
はじめに、本記事で紹介する実例の前提をお伝えします。製品の概要と、自社の運用を材料にする理由、読むときの注意の3点です。
NoimosAIとは:マーケティングの作業を受け持つAIエージェント
NoimosAIは、競合の分析、SNSの運用、SEOやGEO(生成AIの回答に自社の情報が引用されるための対策)、Webサイトの運用といったマーケティングの作業を、AIエージェントが受け持つサービスです。当社は2026年6月に本格提供を始めました。本記事の実例は、すべてこのNoimosAIで行ったものです。当社のSNS運用では、AIが作った案を人が確かめて承認してから実行しています。
自社の運用を材料にする理由と、読むときの注意
当社は製品の提供元であると同時に、自社のマーケティングで毎日使っている利用者でもあります。毎日使っているからこそ、うまくいった場面だけでなく、思うようにいかなかった場面もお伝えできると考えました。
一方で、3つの実例のうち2件は当社自身の運用で、数字も当社の計測によるものです。お客様の事例は1件にとどまります。この前提を踏まえて、読み進めていただければ幸いです。
実例1:自社SNSの投稿運用
1つ目は、当社の公式SNSアカウントの運用です。毎日くり返す作業をAIエージェントに任せ、人は内容を確かめて承認する役に回りました。
毎日AIに任せている4つの作業と、人が受け持つ所
当社では、次の4つの作業を毎日自動で実行するエージェントを作っています。表の右の列が、人が受け持っている部分です。
| 作業 | AIがやること | 人がやること |
|---|---|---|
| 投稿づくり | 複数のSNSで業界のトレンド、反応の大きい投稿、競合の投稿を調べ、話題のテーマや形式、響きやすい訴え方をもとに自社向けの投稿案を作る | 案を確認し、ワンクリックで投稿する |
| コメント・DMへの返信 | 届いたコメントやDMを見つけ、返信案を作る | 返信案をワンクリックで送信する |
| 自社への言及の収集 | XやYouTube、Web上の自社製品への言及を毎日集め、良い言及は広め、悪い言及は原因を探して改善につなげる | — |
| ショート動画の振り返り | 社内のクリエイターが作った動画を分析し、冒頭のつかみ・構成・台本・撮り方について改善点を返す | 動画を作る(社内のクリエイター) |
人の仕事は確認と承認に絞られた
この形にしてから、公式アカウントの運用で人がやる作業は、AIの案の微調整と承認だけになりました。運用にかかる手間は、本格提供を始める前と後で比べて約8割減っています。
SNS施策の全体では、2か月で約6,000万回のインプレッション(表示回数)を得ました。ただしこの数字は、クリエイターが作った動画も含めた施策全体の結果で、AIが作った投稿や動画だけの成果ではありません。
うまくいかなかったこと:AIで作った動画は伸ばしにくい
思うようにいかなかったのが動画です。動画を作るAIの性能にはまだ限界があり、AIで自動化して作った動画で大きな反応を得るのは、文章の投稿に比べて難しいと感じています。
少し改善したのは、良い見本を渡したときでした。自社で反応の良かった動画をもとに、冒頭のつかみだけを変えた別のパターンを作らせると、出来が良くなりました。それでも、どの動画を使うかは、最終的に人が選んでいます。
実例2・3:ブログのSEOとサイト運用
2つ目と3つ目は、検索対策とWebサイトの運用です。どちらも、何を対象にするかを決めてから、作業をAIに任せています。
自社ブログ:狙うキーワード探しと、順位が落ちた記事の書き直し
当社のブログでは、2つの作業をAIエージェントに任せています。1つは、競合は検索上位に出ているのに当社は出ていないキーワードを見つけ、上位の記事を参考に新しい記事を作ることです。もう1つは、前の月より検索順位が下がった記事を見つけ、上位の記事と比べて原因を分析し、書き直すことです。
この運用で、3か月の間に表示回数(インプレッション)が約150万回、ブログへの訪問が8万回以上になりました。
お客様の事例:外部の代理店に任せていた仕事をAIへ移した
お客様の事例も1件ご紹介します。自動車業界のこのお客様は2026年6月に、外部のツールで行っていたWebサイトの開発と運用をNoimosAIに切り替えました。既存のサイトを取り込んで生成AIの検索にも見つけてもらいやすい形に整え、代理店が担当していたSEO対策もすべてAIで行うようにしています。
被リンク(他のサイトから自社サイトへ張られるリンク)を得るためのメール送信や交渉も、AIに移した作業の一つです。外部ツールと代理店を使っていた導入前と、NoimosAIに置き換えた導入後の月額費用を比べると、約2万米ドル(約300万円)少なくなりました。検索結果での表示回数も伸びています。
サイトの取り込みと点検の画面(当社サイト)
下の2枚は、当社のWebサイトで取り込みと点検を行ったときの画面で、お客様の画面ではありません。1枚目は既存のサイトを取り込む画面で、左側でAIに取り込みを指示し、右側に取り込んだサイトのプレビューが表示されています。

▲ 当社サイトをNoimosAIに取り込んだ画面(AGOS LABS TECHNOLOGIES LTD.ご提供)
2枚目は、取り込んだサイトのSEOとGEOの状態を点検する画面です。見出しの付け方やページの説明文などを項目ごとにAIが点検し、できている点と直したほうがよい点を並べます。画面の右側には、点検の結果をもとに直すための「AIで修正」のボタンがあります。

▲ 当社サイトのSEO・GEO点検画面(AGOS LABS TECHNOLOGIES LTD.ご提供)
AIに任せる工程、人が決める工程
3つの実例を通して見えてきた分担を、マーケティングの工程ごとにまとめると次のようになります。
| 工程 | AIに任せていること | 人が決めていること |
|---|---|---|
| 調査 | 情報や候補を集め、事実確認まで行う | どの競合を、どのSNSや検索で、いつの期間について調べるか |
| 戦略 | 選択肢を出す | 対象の顧客・優先順位・予算 |
| 制作・運用 | 自社に合わせた下書きや、表現のパターン違いを作る | 調査結果の確認と、見本の渡し方 |
| 効果測定 | 数字を集計し、変化を整理する | 変化の原因と、次の施策 |
調査と制作・運用は、条件を決めればAIに任せられる
調査は、調べる範囲さえ人が決めれば、その先はAIに任せきれる工程です。実例1の投稿づくりも、実例2のキーワード探しも、どの競合をどこで調べるかを決めてから任せています。
制作と運用は、人が調査結果を確かめて見本を渡すほど、出てくるものの質が上がる工程です。実例1の動画も、反応の良かった動画を見本に渡したことで、出来が少し良くなりました。
戦略と効果測定の判断は人に残す
戦略と効果測定には、開発などマーケティング以外の事情が関わります。AIが選択肢や集計を出すところまでは任せられますが、それを会社の状況に照らして決める場面では、人が判断することが多くなります。
導入で押さえたい5つのポイント
ここまでの実例から、これから導入する会社に押さえていただきたい点を5つ挙げます。
1. 毎日・毎週くり返している作業から任せる
当社では、SNSの調査(実例1)やSEOの順位変動の確認(実例2)をAIに任せています。同じ条件でくり返す作業は、一度流れを作れば、その後の手間を減らしやすいからです。
2. 調べる対象と、何に使うかを最初に決める
AIには、競合、調べるSNSや検索、期間、対象の顧客、伝えたい点を最初に共有します。ここがあいまいなままだと、実例1のような投稿づくりでも、調査結果や投稿案が自社の目的からずれやすくなります。
3. 良い見本を渡す
自社で成果が出た投稿や動画を見本として渡し、出てきたものを見ながら調整します。実例1の動画では、反応の良かった動画の冒頭だけを変えるという具体的な指示が、改善につながりました。
4. 人が確認する場所を決めておく
当社の公式SNSでは、AIが下書きを作り、人が微調整して承認する形にしています(実例1)。最初から公開まで任せるより、品質を確かめながら任せる範囲を広げるほうが進めやすいからです。先ほどの点検画面のように、AIの点検結果を人が見られる場所を、あらかじめ作っておくと安心です。
5. 作業時間だけでなく、直す手間と成果も見る
文章が速くできても、直すのに時間がかかれば、仕事全体は楽になりません。運用の手間と投稿や記事の成果を合わせて見て、任せ方を調整することが大切です。当社も実例1では、手間の減り方と表示回数の両方を見ています。
つまずきやすい3つの思い込み
自社での運用を通して、導入時に注意したいと感じている思い込みを3つ挙げます。
「自動化すれば、人の判断はいらなくなる」
調査や制作の手間は減らせますが、対象の顧客・予算・優先順位は、今も人が決めています。会社や製品の状況まで踏まえた意思決定は、作業の自動化とは分けて考える必要があります。
「見本を渡さなくても、自社に合うものができる」
ポイント2・3で触れたとおり、誰に何を伝えたいかに加えて、良い見本を渡すことが重要です。特に動画は、見本の渡し方で出てくるものが変わります。
「文章も動画も、同じように自動化できる」
調査や文章の下書きに比べて、反応の良い動画を安定して作るのは難しいと感じています。実例1でお伝えしたとおり、動画は今も、最後に使うものを人が選んでいます。
AIに任せる前に確認したい条件
最後に、AIエージェントにマーケティングを任せる前に、確かめておきたい条件をまとめます。
効果が出にくいのは、AIに情報を渡せない場合
社内の決まりなどで、商品・顧客・施策の情報をAIに十分に渡せない場合、任せられる仕事や得られる成果が限られることがあります。自社に合ったものを出してもらうには、目的や背景、見本といった情報を渡すことが前提になるからです。
効果が出やすい会社の3つの条件
次の条件に当てはまる会社は、効果を感じやすいと考えています。
- SNS投稿やSEO記事の更新など、続けて行うデジタルマーケティングの仕事がある
- 少ない人数で、幅広いマーケティングの仕事を担当している
- 作業の負担を減らし、人は戦略や優先順位の判断に時間を使いたい
まとめ:まず1つの作業から任せる
当社の運用では、調査と下書きはAIに、対象の顧客・予算・優先順位の判断は人に、という分担に落ち着いています。動画のように、AIだけではまだ成果が出にくい仕事もあります。
最初からすべてを任せる必要はありません。まずは、毎日くり返しているSNSの調査や投稿の下書きを1つ選び、AIに任せてみてください。
この記事を書いた人
AGOS LABS TECHNOLOGIES LTD. マーケティングディレクター 高橋宏和
AIマーケティングエージェント「NoimosAI」を提供。競合分析、SNS運用、SEO・GEO、Webサイトの構築・運用などのマーケティング業務をAIエージェントが受け持つサービスで、自社のマーケティングにも使っている。




