FDEの導入事例・導入企業は?国内45件の公開状況と社名つき6社

FDE(フォワードデプロイドエンジニア)の導入事例を探しても、社名つきで公開されている例は多くありません。当メディアのFDE企業一覧に掲載している国内45件を調べたところ、事例を公開しているのは19件、そのうち顧客の社名を出しているのは6社でした。さらに6社の発表を一次情報で読むと、「FDEとして」と明記している事例は1件だけです。本記事では、6社の事例の中身と社名を伏せた事例の数字、事例を読むときの確認点を整理します。

FDE導入事例は公開が少ない

事例は45件中19件

当メディアのFDE企業一覧に掲載している45件(2026年9月14日時点)を、各社の公式サイトとプレスリリースで確認しました。顧客向けの事例を公開しているのは19件で、半数に届きません。

  • 事例を公開:19件(社名つき6社・社名を伏せた13件)
  • 自社の実績のみ:8件
  • 提供開始の告知のみ:16件
  • 記載なし:2件

事例の有無はサービスの優劣を示すものではありません。提供開始の告知だけの会社が16件あり、事例を出す前の段階の会社も含まれます。

関連記事:FDEとは?意味とFDE企業一覧|Forward Deployed Engineer

社名つきは6社のみ

顧客の社名を出している事例は、みんなシステムズ、LayerX、GenX、Sakana AI、renue、エイシングの6社です。ただし、6社の発表を読むと中身の性格は一様ではありません。

  • FDEとして明記:みんなシステムズの1件
  • 自社AI製品の導入:LayerX・GenX
  • 共同開発のプロジェクト:Sakana AI
  • FDEのサービスとは別に公表された実績:renue・エイシング

「社名つき事例がある=FDEで成果を出した」とは限らない点に注意が必要です。

社名を伏せる理由

社名を伏せた13件の多くは、伏せている理由をページ上に注記しています。代表的な3社の注記は次のとおりです。

FDXの導入事例ページ:

顧客名は守秘義務により業界カットで掲載しています。

デジライズのプレスリリース:

本リリースでは、すべての顧客名を伏せて業種で記載しています。

株式会社SAIの導入事例ページ:

※ お客様のご都合により、社名・具体的な数値は伏せて掲載しています。

理由として書かれているのは、守秘義務と顧客側の都合です。社名が無くても、業種や対象業務までは読み取れます。

社名つき事例6社の中身

社名つき6社の事例を、発表文の内容で並べると次のとおりです。「FDEとの関係」は、発表の中にFDEの記載があるかどうかで分けています。

会社 顧客 対象業務 公表された数字 公表日 FDEとの関係
みんなシステムズ ムラセグループ 経理業務の省力化(入り口) 未公表 2026年8月3日 FDEの第1号事例として明記
LayerX 福岡銀行 融資契約書の検索・管理 年間約7,000時間の削減を見込む 2026年5月7日 製品導入(発表にFDEの記載なし)
LayerX JA三井リース 見積書のシステム登録 作業時間の5割(年間7,500時間)削減を目指す 2026年3月10日 製品導入(発表にFDEの記載なし)
GenX 芦原国際ホテル美松 外国人スタッフ向け業務データの翻訳 業務習得期間が3〜4週間から2週間に短縮 2026年5月29日 製品導入(事例にFDEの記載なし)
Sakana AI 大和証券 マーケット情報の収集・分析 未公表(本番開発フェーズへ移行) 2026年8月5日 共同開発(発表にFDEの記載なし)
renue 丸紅(静岡県島田市) 工事見積書の作成 約15時間の作業が約30分に 記載なし 支援実績として掲載(FDEのページに記載なし)
エイシング オムロン 巻取り機の振動抑制 制振時間を約9秒短縮・1工場あたり年間5,000〜6,000万円分の不良品削減 提携発表は2018年11月29日 FDE型への刷新(2026年7月)より前の取り組み

FDE公表:みんなシステムズ

みんなシステムズは、中小企業向けのFDE支援を全国展開するとPR TIMESで発表しました(2026年8月3日)。発表では、ムラセグループを第1号と位置づけています。

その第1号となったのが、長崎県佐世保市で自動車学校・ホテル・レンタカー事業を展開するムラセグループです。

支援の中身は、エンジニアが現場に入り「経理業務の省力化を入り口に、集客強化やAI活用による成長戦略までを見据えた総合的な取り組み」を行うというものです。支援は始まったばかりで、成果の数字は公表されていません。

製品導入:LayerXとGenX

2社の事例は、自社のAI製品を顧客企業に導入した発表です。事例の発表文にFDEという言葉は出てきません。

LayerX(福岡銀行・JA三井リース)

LayerXは、AIプラットフォーム「Ai Workforce」を福岡銀行が導入したと発表しました(2026年5月7日)。対象はストラクチャードファイナンスの契約書類管理で、数字はいずれも見込みです。

  • 契約書検索:約6,500時間/年
  • 管理表作成:約500時間/年
  • 合計:年間約7,000時間の削減を見込む

JA三井リースの事例(2026年3月10日)は年間約1.8万件の見積書登録が対象で、「作業時間全体の5割(年間7,500時間)削減を目指します」と目標の形で書かれています。なお、同社の採用ページではFDEの募集で「Ai Workforce導入プロジェクト」への参加が業務内容に挙げられています。導入にFDEが関わる体制はありますが、2本の事例発表そのものにFDEの記載はありません。

GenX(芦原国際ホテル美松)

GenXは、福井県あわら市で旅館を営む株式会社芦原国際ホテル美松の事例を公開しています(2026年5月29日)。自社の「ナンデモンAI」で、外国人スタッフが毎日使う業務データを翻訳できる仕組みを作った事例です。

外国人スタッフの業務習得期間が3〜4週間から2週間に短縮されるという成果に繋がっています。

数字は導入後の結果として書かれていますが、事例ページにFDEの記載はありません。

共同開発:Sakana AIと大和証券

Sakana AIは、大和証券との共同AIプロジェクトが本格展開フェーズへ移行したと発表しました(2026年8月5日)。流れは次のとおりです。

  • 2025年9月:パートナーシップ契約を締結
  • 技術検証:マーケット情報の収集・分析をテーマに実施
  • 2026年8月1日:ウェルスマネジメント領域の本番開発フェーズを開始

成果の数字は公表されておらず、発表文にFDEの記載もありません。FDEの職種は、同社のApplied Team紹介ページに採用ポジションとして載っています。

FDEと別の実績:renueとエイシング

2社はFDEを掲げたサービスを持っていますが、社名つきの事例はFDEのサービスとは別に公表されたものです。

renue(丸紅)

renueは支援実績ページで、静岡県島田市で土木建築事業を手がける株式会社丸紅との「工事見積作成AI」の共同開発を紹介しています。

専門担当者が約15時間かけていた
見積書の作成が約30分になり、経験の浅い社員でも図面から数量を拾える体制を実現。

掲載日は書かれておらず、同社のFDEのサービスページにこの事例は載っていません。

エイシング(オムロン)

エイシングは、オムロンとの提携を2018年11月29日に発表し、制御機器向けのAIに取り組んできました。振動抑制AIのページでは、バッテリーセパレータフィルム用巻取り機の事例として次の数字を載せています。

  • 制振時間:約9秒短縮(従来は10秒程度)
  • 不良品:1工場あたり年間5,000〜6,000万円分を削減

同社が既存の「AI導入伴走サービス」をFDE型へリニューアルしたのは2026年7月29日です。提携の発表はそれより7年以上前で、FDE型サービスとして公表された事例ではありません。

社名を伏せた事例の数字

社名を伏せた13件のうち、数字や具体的な取り組みが書かれている主なものは次のとおりです。注記の列には、数字の性質や範囲に関わる記載を残しました。

会社 業種・対象 公表内容 注記
デジライズ 大手製造業 社内問い合わせ対応の約55%を自動化 FDEが約3ヶ月オンサイトで常駐
FDX デジタル人材育成・コンサル・人材紹介 CRM入力工数 約90%削減 自社推計
株式会社SAI 広告代理店 HP制作とSNS・広告運用を自動化 社名・具体的な数値は非公開
ティースリー 業種の記載なし(社内FAQ) 問い合わせ対応工数を50%削減 導入実績として列挙
テコテック 業種の記載なし 実装スピードを約3倍に向上した例もあり 従来の開発プロジェクトとの比較
アールストリート M&A関連業務 約100本のAIワークフローとして実装 数値の成果は記載なし
Salesforce FDE Partner Network Agentforceの実装 全成功実装事例の3分の1をパートナーが牽引 グローバルの数字(国内ではない)

実績と見込みの書き分け

同じ「削減」でも、発表文の書き方で数字の性格が変わります。数字の直後の言い回しを見ると区別できます。

  • 見込み・目標:「見込む」「目指す」(LayerXの2事例)
  • 自社の推計:「自社推計」の注記(FDX)
  • 導入後の結果:「短縮」「削減を実現」(GenX・エイシング)

見込みや推計の数字は、算出の前提を発注先に確認してから比べるのが安全です。

数値を出さない会社

社名を伏せた13件には、数字を出していない会社もあります。株式会社SAIは社名と数値の両方を伏せ、成果を「同じ人数で対応できる案件数が増加」のように書いています。数字が無いことは候補から外す理由にならず、支援した業務の中身が自社の課題に近いかで判断できます。

事例を読む際の確認点

ここまでの実態を踏まえると、事例を読むときは次の4点を確認すると発注先を比べやすくなります。

FDE関与の有無

まず、その事例にFDEやエンジニアの現場常駐が関わったと書かれているかを確認します。社名つき6社でも、FDEと明記していたのは1件でした。デジライズの「FDEが約3ヶ月オンサイトで常駐」のように体制まで書いてあれば、支援の形が読み取れます。

数字の実績と見込み

数字の後ろが「見込む」「目指す」なのか、「短縮」なのかを見ます。「自社推計」の注記がある場合は、推計の前提を商談で確認してください。社内で費用対効果を説明するときに、この違いがそのまま説得力の差になります。

近い業種と規模

業種と対象業務が自社に近い事例を探します。社名が伏せられていても、「大手製造業」「広告代理店」のように業種は書かれていることが多く、比べる材料になります。

事例がない会社への聞き方

事例を公開していない会社には、商談で次の3点を聞くと実態をつかめます。

  • 体制:何人のエンジニアが現場に入るか
  • 期間:どのくらいの期間、どの頻度で入るか
  • 範囲:実装まで担当するのか、助言までか

事例の有無より、自社の現場に置き換えた質問に具体的な答えが返ってくるかを見てください。

関連記事:FDEの費用相場は?国内43社の公開料金と見積前の4条件

図解:事例を読むときの確認点

まとめ:事例で絞る順番

国内45件のうち事例を公開しているのは19件、社名つきは6社で、FDEと明記した事例は1件でした。事例は数の多さではなく、中身が読めるかどうかで使うのが現実的です。

  1. FDEの記載や常駐体制が書かれた事例かを確認する
  2. 数字が実績か、見込み・推計かを見分ける
  3. 業種と対象業務が自社に近い事例を探す
  4. 事例が無い会社には体制・期間・範囲を聞く

まずは当メディアのFDE企業一覧で候補を2〜3社に絞り、各社の事例ページをこの4点で読んでみてください。

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