Qwenに学習させない方法は?チャット版・API・ローカルの違い

Qwen(クウェン)に入力した機密情報や社内データは、モデルの学習に使われるのか。結論から言うと「使い方によって変わる」が答えで、チャット版・API・ローカル実行の3つで扱いがまったく違います。本記事では公式の規約とポリシーをもとに、経路ごとの学習の可否と止め方、組織での判断基準を整理します。

Qwen Studioの運営とデータ保存先

Qwenはアリババが開発・提供する大規模言語モデルです。まずは誰が運営し、データがどこに置かれるのかを確認します。

運営はアリババのシンガポール法人

Qwenのチャットサービス「Qwen Studio」の提供主体は、シンガポールに拠点を置くAlibaba Cloud (Singapore) Private Limitedです。利用規約もプライバシーポリシーも、同法人の名義で公開されています。

シンガポールと中国本土でのデータ処理

公式のプライバシーポリシー(英語・2026年5月19日更新版)には、ユーザーの個人データを「シンガポールと中国本土の両方」で保存・処理すると明記されています。

シンガポール法人が運営していても、データは中国本土にもまたがります。なぜ両地域なのかについて、ポリシー上の説明はありません。データを特定の地域内に留めたい企業には、ここが判断の分かれ目です。

Qwenに学習させない3つの方法

入力したデータが学習に再利用されるかどうかは、どの経路でQwenを使うかによって大きく変わります。

3つの経路と学習の扱い

経路は「Qwen Studio(チャット版)」「API」「ローカル実行」の3つです。学習の扱いは次のとおりです。

利用経路 学習への利用 データの機密性 対策・手段
Qwen Studio(チャット版) 原則として利用される可能性あり 中〜低 申請による個別のオプトアウトが必要
API(Model Studio) 学習に利用されないと明記 企業向けの既定の設定で利用できる
ローカル実行 外部送信されず学習されない 最高 モデルを自身のサーバー内に閉じる

手軽なQwen Studioほど、利便性と引き換えにデータの扱いへの注意が要ります。

チャット版の学習範囲と止め方

最も多く使われるチャット版について、扱いを詳しく見ます。

非特定化データとフィードバック

運営側は、精度や品質の改善を目的にユーザーの入力内容を利用することがあります。ただし対象は限定されており、ポリシーでは個人を識別できないように加工した「非特定化されたユーザーコンテンツ」と、ユーザーからの「フィードバック」の2つと説明されています。

法的根拠は運営側の「正当な利益(legitimate interests)」です。とはいえ、機密情報を含む入力が学習に組み込まれるリスクを、ゼロと断定することはできません。

オプトアウトは申請制

多くのAIサービスは設定画面のスイッチで学習をオフにできますが、Qwen Studioに同様の切り替え項目は確認されていません。

公式の学習データに関する説明ページ(英語)が案内しているのは「リクエストを提出する」という手順です。連絡先はプライバシーポリシー記載のデータ保護責任者(DPO)宛メールアドレス(DPO_qwenlm-intl@service.alibaba.com)で、同ポリシーは利用者の権利として「データの処理に対する制限または異議(restrict or object to processing)」を挙げています。申請しないと止まらない点が、社員に利用を許可する際の留意事項です。

評価ボタンと会話の保存

Qwen Studioには、回答を評価する高評価・低評価のアイコンがあります。プライバシーポリシーには、これで評価すると関連する会話がフィードバックの一部として保存されると明記されています。

そのフィードバックは、学習に使われるデータ区分でもあります。評価ボタンを押すことは、その会話を学習の対象に差し出すのと同じです。機密性の高いやり取りでは使わないでください。

保存期間は非明示

保持期間の具体的な日数は公式に明示されていません。ポリシーには「継続的な正当な必要性(ongoing legitimate need)」がある間は保持し、アカウント削除後も法的義務などがあれば残る場合があると書かれています。一度送ったデータを利用者側で完全に消すのは難しいと考えてください。

図解:チャット版(Qwen Studio)で学習に使われる範囲と止め方

APIとローカル実行の学習対策

より厳格なデータ管理が求められる用途では、チャット版ではなくAPIやローカル実行を選ぶことになります。

APIは学習対象外と明記

プログラム経由で使う「Alibaba Cloud Model Studio」のAPIでは扱いが変わります。公式のセキュリティ・プライバシー説明ページ(英語・2026年5月15日更新版)に「Alibaba Cloudは、モデルのトレーニングにユーザーのデータを使用することはない」と明記されています。

あわせてSOC 2(unqualified opinion)を取得し、アプリ構築とモデル学習の際に送信されるデータはAES-256で暗号化されると説明されています。社内データを扱うなら、まずこのAPI経由が候補になります。

ローカル実行で外部送信を遮断

Qwenはモデルの重み(ウェイト)を公開しています。Qwen3.8-27BはHugging Faceの公式モデルカード(英語)でApache 2.0です。ただしライセンスはモデルごとに異なり、大規模なモデルにはApache 2.0以外のものもあるため、導入前に必ず確認してください。重みを自社のサーバーやPCで動かせば、データが外部に送信されることはありません。

関連記事:【完全ガイド】Qwen 3.5の選び方・動かし方|高性能AIをローカル環境で最大限活用する方法
関連記事:Qwen3.8-27Bのウェイトが公開|Apache 2.0で商用利用可能に

環境構築に技術的な知識は要りますが、外部に渡るリスクを物理的に断てるのが利点です。

Qwen Codeの認証と扱い

コーディング支援の「Qwen Code」も、プロンプトやコードが学習に使われることはないとされています。ただし認証に「Qwen OAuth」を使うか、「Alibaba Cloud」アカウントか、「独自のAPIキー」かによって、適用されるポリシーが変わります。導入時は自分の認証方式がどの規約に紐づくかを、必ず公式ドキュメント(英語)で確認してください。

図解:APIとローカルなら学習の対象から外せる

組織導入時の判断基準

どの経路を認めるかは、扱う情報の重要度で決めるのが基本です。

情報の機密度による経路選定

情報の重要度ごとに、使ってよい経路を決めておきます。

機密度のレベル 想定するデータ 認める利用経路
レベル1 公開情報の要約や一般的な調べもの Qwen Studio(チャット版)まで許容。個人アカウントは避け、組織で管理するアカウントを使う
レベル2 社内ドキュメントなどの準機密情報 API(Alibaba Cloud Model Studio)経由のみ。学習に使われない旨を社内規程に明記する
レベル3 極秘情報・顧客データ ローカル環境または自社専用のプライベートクラウドでの実行のみ

利用規約のライセンス条項確認

学習利用とは別に、法務面で注意したいのが「ライセンス条項」です。Qwenの利用規約(英語)には、入力したコンテンツ(User Content)について運営側に「無条件、取り消し不能、非独占的、ロイヤリティフリー、譲渡可能、サブライセンス可能、永続的かつ全世界的なライセンス」を付与する条項があります。

一方で別の条項には「ユーザーがプロンプト自体の所有権を保持する」とあります。権利を誰が持つかと、運営側にどこまで利用を許すかは別の話です。自社の創作物や特許に関わる内容を入力する前に、法務部門で確認してください。

関連記事:【比較検証】シャドーAI対策ツール6選|社内のAI利用を可視化する方法

図解:会社で使うときの判断基準

まとめ

要点は5つです。

  • チャット版(Qwen Studio)は、入力が学習に使われる前提で扱う。
  • 学習を止めるには、UI設定ではなくDPO宛メールでのオプトアウト申請が必要。
  • 評価ボタンを押すと会話が保存され学習対象になるため、機密情報では使わない。
  • 学習に使わないと明記されSOC 2も取得しているAPI経由が、法人向けの基本線。
  • 最も機密性が要るならローカル実行を検討する(ライセンスはモデルごとに要確認)。

まずは自社のデータを「再学習されては困るもの」かどうかで仕分けし、該当するものからAPI利用へ切り替えてください。

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