フジテレビ、全ドラマで生成AI活用へ|27年10月めど・一部工程は工数最大8割減

画像:AIエージェントナビ編集部

生成AIを仕事に取り入れたいものの、どの工程から手をつけ、どこまで任せてよいか迷う企業は少なくありません。フジテレビは11月5日、2027年10月をめどに、同社が制作するすべてのドラマで生成AIを作品やシーンに応じて使える体制を整えると発表しました。

本記事では、実験場「AI Sandbox」の中身と工数削減の数字の読み方、全ドラマへ広げるまでの進め方を解説します。

実験場「AI Sandbox」で始まった活用

AIセンターのもとで9月から運用

フジテレビは7月の組織変更でデジタル戦略統括室内に「AIセンター」を新設し、そのもとで湾岸スタジオにAI活用の実験場「AI Sandbox」を設けました。第1スタジオ(ドラマ・映画制作センター)、テックアートデザイン局、AI関連企業の株式会社ANDENTなどで構成するプロジェクトチームが、9月から運用しています。ドラマのディレクターやプロデューサー、技術スタッフが、外部のAIプロデューサーやAIデザイナーと一緒に、実際の制作を通じて使い方を確かめています。

『救命病棟24時』で事故現場を表現

すでに放送中の『救命病棟24時』をはじめ、複数のドラマで使われています。撮影前に監督が思い描く映像を生成AIで目に見える形にしてスタッフで共有し、医療シーンの細かな映像処理や、実際の撮影では難しい事故現場の表現に活用しています。第1話の爆発事故シーンでは、空撮の風景そのものをAIで生成し、そこに煙を合成しました。

なぜドラマ制作に生成AIを入れるのか

撮影が難しい場面を補う

フジテレビは現在、地上波のゴールデン・プライム帯で連続ドラマを年間16本制作しています。撮影を取り巻く環境が変わる中で、作品の世界観や演出の意図を実現するため、実写撮影、VFX(視覚効果)、CG、生成AIの中から、作品やシーンに合う方法を選ぶ考えです。従来の撮影条件では難しかった表現に取り組むとともに、現場の負担を減らし、安全性を高める狙いもあります。

すべてをAIで作るわけではない

ドラマ・映画制作センターの長嶋大介部長は、場所、天候、法令、安全面などの制約で撮影が難しいシーンの表現から、制作初期のイメージ共有まで、活用の場面は多岐にわたると説明しています。一方で「AI Sandbox」の技術統括を務める真崎晋哉氏は「すべてをAIで作るのではなく、従来のVFXなどと組み合わせ」ていると話しており、AIは選べる手法の1つという位置づけです。

工数削減の数字と、全ドラマへの道のり

一部工程で工数を最大70〜80%削減

検証では、生成AIを使った一部の映像制作工程で、従来の手法と比べて作業工数を最大70〜80%削減できることを確認したといいます。どの工程でどれだけ減ったのかという内訳は、発表では示されていません。

同社は、この数値は特定工程の検証結果であり、作品全体の制作費の削減率や、制作工程全体の平均削減率を示すものではないと明記しています。「ドラマ1本の手間が8割減る」という意味ではない点に注意が必要です。

2027年10月めどに全ドラマで使える体制へ

本格導入に向けて、2026年10月期からは毎クール1本以上のドラマを「AI強化枠」に設定し、AI Sandboxで実際の作品づくりに挑みます。そこで得た経験や知見を社内で蓄積・共有し、使える範囲を広げていきます。

そのうえで2027年10月をめどに、フジテレビが制作するすべてのドラマで、作品やシーンに応じてAIを使える体制を整えます。その後はフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の映像関連企業にも取り組みを広げ、2029年度にはFMH全体で国内トップベンダーレベルのAI活用機能を持つことを目指すとしています。

まとめ

  • フジテレビが11月5日、2027年10月をめどに全ドラマで生成AIを使える体制を整えると発表
  • 湾岸スタジオの実験場「AI Sandbox」を9月から運用し、『救命病棟24時』などで活用中
  • 一部の工程で作業工数を最大70〜80%削減。作品全体や工程全体の削減率ではない
  • 2026年10月期から毎クール1本以上を「AI強化枠」に設定
  • 2029年度にはFMH全体で国内トップベンダーレベルのAI活用機能を目指す

💡 編集部の見解

「8割減」の数字だけを見て、ドラマ制作がAIで大幅に安くなると読むのは早いと編集部は見ています。同社自身が、削減は特定工程の検証結果で、作品全体の数字ではないと断っているためです。

  • 減ったのは一部の工程の手間:発表は工程ごとの内訳を示しておらず、「制作工程全体の平均削減率を示すものではない」と明記しています。
  • 狙いは撮りにくい場面を撮れるようにすること:担当者は、天候や法令、安全面の制約で撮影が難しい場面の表現や、撮影前のイメージ共有を活用の場面に挙げ、効率化と並んで表現の幅を広げることを目的にしています。

出典:フジテレビ

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